「だんなさまの魔法になんか興味がないね。あんたもよけいなことに興味を持つべきじゃない。あたしは生きてる人間の望みや要望を聞くだけで手いっぱい。死んだ人間のことまで構っちゃいられないよ」
「つまり、ディー博士がしようとしてるのはそういうこと?」
わたしは声を潜めて訊ねた。
「死んだ人の霊を呼び出して、話をしようとしてるの?」
時は十六世紀のイングランド。エリザベス女王に憧れている少女・ルーシーが、父親の虐待から逃げ出したら、ひょんなことから、エリザベス女王に仕えていると噂される魔術師・ディー博士の子守として雇われることになって……好奇心旺盛な少女が女王を巡る陰謀に巻き込まれていくお話です。
女王陛下に憧れるという気持ちが、すっごい伝わってくるんですが、当時はここまで妄信的な人も多かったのかしら。一歩間違えれば危ういような気がしないでもないけど、その憧れからロンドンまでやってきて、何とか生活していくんだから、侮れないものです。
好奇心旺盛っぷりは楽しくもありますが、やっちゃだめと言われてても、ちょっとだけと手をつけてしまうので、何気にハラハラすることが多くて困ります。たいていはたいしたことなく切り抜けるんですが、それでもね。っていうか、その切り抜け方が物足りなくもあるんですけど。女王陛下の側にいるトムキャットに、あっさり信じられるあたりとか……ねぇ?普通もっと怪しむもんじゃないかしらと思いながら、ホッとする僕がいる。
子守として雇われた家の主人は、魔術師として暗い噂があるものの、まあ、どちらかといえばエセ……というか、たぶん、本人はまじめなんだけど、女王陛下に取り入ろうとする輩が利用しているように思えなくもない。どう考えても、天使の声が聞こえるというディー博士のパートナーは怪しいよね。
おかげで、悪巧みにこっそり組み込まれそうになって、何とか断ろうとするルーシーが、あれよあれよという間に巻き込まれていくところは、むしろ彼女の性質というかなんというか、隠されたものですよね。実は何気にルーシーが一番そういった「力」を持ってるんじゃないかと思ったりしてるんですが……、今回は特に何も明かされなかったので、なんともわからん。
たぶん、今回のお話で、いろんなところと繋がりができたので、おそらく次以降のほうが面白くなるんじゃないかな。今回もつまらないわけじゃないんだけど、どうにも事がうまく運びすぎるというか物足りないので、次はもうちょっとワクワクさせてくれるとうれしいな。
ハウス・オブ・マジシャン (ルルル文庫)
メアリー フーパー
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