時は平安。二条中納言家の詞子は、呪われた子、鬼を呼ぶ姫と家族にまで疎まれていた。ある嵐の夜、妹・艶子が鬼に連れ去られそうになるという事件は、詞子が鬼を呼んだからだとして、白河の別荘へと遠ざけられてしまった。
一方、左大臣の嫡子・源雅遠は、歌ひとつ満足に作れないため、女と付き合うことができないどころか、出来の良い弟と比べられる毎日にうんざりしていた。気晴らしに馬で遠乗りしたとき、とある桜に見とれていたら、そこに可憐な女の人が……。
言われなき出来事で鬼姫と呼ばれるようになってしまった少女と、人は善くとも不器用さから貴族仲間から蔑まされていた少年が惹かれあっていくお話です。
ああ、素晴らしい。この人の描くお話って、恋愛ものの王道だと思うんですが、魅力たっぷりですよね。
妹にすら鬼姫と呼ばれる境遇もさることながら、自分には呪いがかかっていると信じきって、周囲の人を遠ざけようとする姿が、とてもやるせない。平気な顔をしながらも、寂しさは当然あって。自分の境遇に息苦しさを感じていたときだけに、雅遠の登場は、まさに風穴を開けるようなものでしたよね。
礼儀を知らぬ強引さに押されながら、突き放すことが出来なかったのは、そこに悪意が感じられないところか、優しさを感じてしまったからで。雅遠の言葉に、笑顔を見せ始めていく詞子を見ていると、こちらまで嬉しくなっていくものがありました。
雅遠も雅遠で、貴族の息子として、権力者の娘と接点を作れと言われ続けることや、自分の恋歌を笑われることにうんざりしていたから、詞子のもとで静かにふたりですごせるという環境が、とても魅力的だったんでしょうね。
それは、どちらかといえば逃避だったと思うんですが、屋敷にいけない日が続くにつれて、自分がどれほど、白河の別荘に、詞子に安らぎを得ていたのかを知っていくところが良かったです。
いやあ、面白かった。恋というものを知らなかった者たちが、離れたことで相手を思う気持ちに、恋という思いに気づいていくところは、甘くて、温かくて……素敵でした。
親同士の立場を考えると、結ばれるのは結構難しい気がしますが、それでもきっと、と思いたいです。
桜嵐恋絵巻 (小学館ルルル文庫 (ルみ1-6))
深山 くのえ
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