「なにしろ、いま我らが主であらせられる大公殿下は」
といって、上座を見る。誰も温めることのないまま、もう二時間も放置されている空の玉座を。
「この場にご不在なのですから」
無理もない。
これは、ごく限られた者の耳にしか入っていない情報だが、なんと昨夜から大公妃メリルローズが行方不明なのだ。
仲睦まじい大公ルシードと公妃ジルは、実は仮面夫婦で、彼らの正体を知るマシアスと三人で手を組み、打倒パルメニアのために、国力を強化していこうというお話の第三弾。前作で敵の罠にはまり拉致されたジルを助けるために、ルシードが奮闘するお話です。
仮面夫婦だったのはずなのに、気づけば相手のことを真剣に考えてますよね。公妃だから、大公だからと、建前を並べているものの、心配する姿は、間違いなくひとつの感情を思い起こしてくれて。実際、敵の策にハマったジルが怒りをあらわにするのは、ルシードの心の傷を抉られたときだし、ルシードはルシードで、ジルを捜し求めるために、手段を選ばなかったし。
特に、薬で朦朧としていたジルが弱さを見せたとき、ルシードが発作的に見せた行動には、もうニヤニヤです。
一方、王宮に忍び寄った影ですが、なかなか痛いところをついてきますね。なまじルシードたちのやろうとしていることが正しいからこそ、追いつけないものに不満がたまるというわけですが。もちろん、煽ってる人がいるんですが、内部の燻りに気づけなかったのは、ジルとルシードの落ち度といってもいいのかな。
よりによって大きな秘密を敵に知られてしまい、それを利用して追い詰められていくんですが、そうやすやすとやられないところが、この夫婦なんだな。相手の思惑を逆手に取り、それを実行する逆転劇は、とても痛快でした。
にしても、お約束かもしれないけど、あの状況で逃げられちゃうのは、ちょっとなあと思った。
陰謀劇は面白くもちょっと物足りないところがあったけれど、後日談がすっごい面白かったなあ。ジルのくどき文句には微動だにしなかった犯罪者が、ルシードの言葉に落とされるんだから、この天然男が!と思わずツッコミそうになる。
ジルもジルで、旦那様にたいして、今までにない積極性を見せて……落とすか(笑)。いや、ほんとはルシードを思ってるよね?ちょっと言葉の選択を間違っただけだよね?
ルシードがちょっと可哀想だったので、ちゃんとフォローしてあげてください、ジル。
さて、一見、めでたしめでたしですが、いろいろと不安も出てきてますね。特にジルを探すときに必死すぎて、いろいろやっちゃいけないことをルシードがやってしまったので、このあたりが今後どうなっていくのかは、大いに気になりますね。
あと、今まで清楚なイメージしかなかったメリルローズでしたが、何気にヤンでるみたいなので、このあたりも気になります。
プリンセスハーツ 乙女の涙は最強の武器!の巻 (小学館ルルル文庫 た 1-4)
高殿 円
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