「……です、から……」
「……」
「やっぱり……月真さんが、好き、ですから……」
貧しさから売られた娘の愛鈴が、お忍びの太子と出会って、惹かれあっていくといったシンデレラストーリィのシリーズの番外編。主役カップル以外と、脇役カップルにも焦点を当てたラブストーリィ短編集です。
ああ、いいなあ。慧俊と愛鈴のいつまでも初々しい様子は、顔がにやけてしょうがないですが、ま、それはおいといて、何といっても良かったのは、佳葉と慈雲の婚礼の日の模様を描いた「愛しき日々」です。
好きなのに意地を張ってしまって、言葉や態度に出せない二人が、いつから好きになったんだろうと、幼いころを振り返ところがあるんですが、お互い相手の思い出を大切にしてる様子が伝わってきて、ああ、こういう関係いいなあと思っちゃいました。
婚礼の儀を終えて、でも相手の気持ちが分からないから不安で。そんな佳葉に対して、不器用ながら、まっすぐな言葉をかけた慈雲に、もうニヤニヤがとまらないです。どの口で「口が上手くない」と仰りやがるんですか!ああ、気障がここにいる!
その後の話として、「温家の休日」という別短編で、新婚直後の佳葉と慈雲の様子が見れるんですが、ここでも楽しくなれちゃうこと間違いなしです。
そしてもうひとり気になっていたのは、毎回愛鈴と巻き込まれて大変な目に合ってる香泉ですが、御史である月真との恋が「いつか扉の開く日」で描かれてました。
好意を寄せられていることに気づきながら、過去に引け目を感じて、距離をとっていた月真が、とある任務で、同じような立場の男女と出会い、香泉を意識していくところが王道ながら良かったです。月真の気持ちを知り、諦めようと思いながら、諦め切れなかった香泉の健気な姿も印象的でした。
笑顔が見たい、そんなふたりの思いが通じたシーンは、きゅんとしちゃいましたね。
個人的に好きなお話は「宮妓の矜持」だなあ。宮妓となった没落貴族の娘の明艶が、なぜ一番の実力を持っている自分ではなく、愛鈴が幻と言われた『雪月梅花』を舞いを教わることができたのか、ということを考えていくお話です。これは珍しく恋愛ものじゃなかったですね。
貴族という地位がないから、舞を習えなかった。そんな言い訳を自分にしていたことに気づいて恥じる姿を見ていると、自分にも当てはまるものがあるような気がして、耳が痛いものがありましたが、迷いを覚えていたときに、后となった愛鈴の変わってない様子を見て、舞が自分にとってどういうものであったかということを思い出していくところが良かったです。
明艶だけでなく、教坊で舞を教えていた貞琴の凛とした姿も素敵でした。
いやあ、面白かった。
カップル話はラブラブで、それ以外でも、前を向く者のお話ばかりで、とても楽しかったです。もっと読みたかったなあ。完結してしまったことは残念でなりませんが、次なるお話を作ってるとのことなので、期待して待っていたいと思います。
舞姫恋風伝~花片小話
深山 くのえ
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