かつて先祖が騙され、奪われたという首飾りを彩っていたルビーのひとつが、王宮の宝物庫にあるらしい。噂を聞きつけた少女ライラは、伝手をたどり、こっそりと宝物庫に忍び込んだが、そこで若い男に見つかった。退屈していたという男は、ライラを捕えもせず、あろうことかルビーを差し出し、こういった。
「この夜が明けてから一日だけ、俺はお前を見逃してやる。ただし、次にお前が俺とであったら、その時には必ず捕まえてやる……」
躊躇しながらも逃げ切ったライラだが、三日後、男は目の前に現れて……
先祖の奪われたルビーを捜し求める商人の娘・ライラと、彼女を妻にしたいと言い出した宝物庫の番人……ではなく第十八王子シャルディーンの恋物語なんですが、いいなあ、こういうベタというか、分かりやすい恋愛物語は。どういう展開になるかはわかるのに、素敵な甘さと魅力的なキャラクタのやり取りに惹かれます。
目的のためなら王宮にだって忍び込むというライラのお転婆っぷりは非常に楽しいですが、そんなライラをからかいながら、でも大切に包み込むシャルディーンが素敵だったなあ。王位継承争いに加われない十八番目の王子ってことで、婿入り先を探しているなんて言い出すから、どんな嫌なやつかと思いきや、ライラの家でお手伝いをする様に、彼の本気が見えて格好いいんだ。
初めての給金で送ったプレゼントとか、キザーーとか思いながら、僕がライラの立場だったら、間違いなく惚れてます、ええ。
幼い頃に定められた婚約者がいるってことで、始めはシャルディーンを拒んでいたライラだけど、彼の本当の姿を知っていくうちに、どんどん惹かれていくところは、切なさもあって、ああ、なんて素敵な乙女心とか思ったりしてましたが、心が大きくシャルディーンに傾いたのは、彼の寂しげな本音が見えたからでしょうね。
地位ではなく温かさを求めて、しかもその温かさの相手に選んだ人がライラであることが見えたところは、ほんとドキドキする。
優しさに触れ、温かさを感じ、それでも十年という時を思い続けてきた「約束」との間に、心揺れていたライラでしたが、そんな彼女の背中をポンと押してあげたのが、お母さんだってところがいいですね。家族の出番って、それほどないんだけど、ああ、こういう家庭だから、こういうお嬢さんが育ったんだなと、そう思える雰囲気が感じられました。うん、素敵。自分の気持ちに素直になったライラが、危なくも突っ走っていくところには、行け行け!と応援したくなりました。
幼い頃のお話が、今に繋がってくるところは、お約束過ぎるだろうと思いつつ、良かったなあと心から思いました。
いやあ、面白かった。最後の最後まで、仲良くケンカする姿に、心が温かくなるばかり。表立っては、余裕を見せるシャルディーンが、裏ではライラに弱いところとか、想像するだけで、頬が緩んでしまいますね。
これからきっと彼らは幸せな道を歩んでくれるだろうと、そう思えるお話でした。
アラビアンローズ―ライラの受難
深山 くのえ
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