旧世界を破壊した<グレートホワイト>と呼ばれる天変地異を経た現在、人間にも家畜にも、突然変異した子どもが生まれることがあった。「異常」をもつ不適者(ミスフィット)は、見た目では人間と区別がつかないが、生き残った人々が結成した<委員会>は、自分たちの支配が及ばなくなるのを恐れ、ミスフィットの「疑い」があるものを片っ端から捕らえ、強制労働を課していた。
超能力を持つエルスペスは、自身の力を必死に隠して、孤児院で生活していたが、ある日、連れて行かれて戻ってきたものがいないという<オバーニュウティン>の監督官に、ミスフィットの疑いをかけられて……
おお、これは面白い。ルルル文庫の翻訳シリーズは、なかなかいいところ突いてくるから、侮れないなあ。
一度世界が滅びた後の近未来が舞台で、ミスフィットといった具合に普通とは違う力を持つものが弾圧される世の中なんですが、実際のところ、ミスフィットと呼ばれるような力を持つものはほとんどおらず、ミスフィットの疑いをかけられたものばかりが、強制労働を課されるという状態なので、嫌がらせや密告などがはびこりつつあって、いわゆる魔女狩りみたいな感じになってます。
そんな中、エルスペスという少女は、人の心が読めたり、時々未来を予知したり、動物と会話ができたりという超能力を持って生まれてしまったので、さあ、大変。必死になって、力を隠して生き延びていく姿に、ハラハラドキドキなサスペンスを味あわせてもらいました。
ちょっとしたことから、力があるのではないかと疑いをかけられて、<オバーニュウティン>に連れて行かれることになったときには、どうなるかと思いましたが、決して折れずに、前を向く姿がいいなあ。臆病といっていいほど慎重な姿には冷静さを感じますが、それでいて無邪気な好奇心を見せてくれるので、見守りたくなるものがありますね。
それと、ここで、同じような力を持つ人たちと出会えたのは、ほんと良かったなあ。冷静で頭もいいとはいえ、まだ少女ですから、仲間の存在は大いに心強かったと思います。
いつかは抜け出したいと思いながら、でもどうすればいいのか途方にくれる中、<オバーニュウティン>を牛耳っていたものたちが、何かを企んでることが見えてくるんですが、その目的のために、力を持つものを利用しようとすることが発覚したところでは、なんともやりきれないものがあったなあ。
エルスペスよりも幼い女の子が、治療と称して、何らかの力を加えられて、日に日に弱っていく姿を見せられたとき、何とかしてあげたいと思いながらも、何もできない姿が歯がゆく思いますが、いくら力を有するとはいえ、エルスペスやその仲間たちは、まだ少女・少年なんですよね。彼ら彼女らの悔しさが伝わってくるところに、心の痛みを覚えます。
それでも何とかしようと、外へ向かい始めたときに、刃を向けてきた人の姿を見たときには、まさか!と思いましたが、そうだよね、そうじゃないとね。お約束とわかっていても、あの人が手を延ばしてくれたことを嬉しく思う。
それ以上に嬉しかったのは、猫のマルマンと出会えたこと!いつか出てきてくれると思いましたが、一番不安で、でも進まなきゃいけないときに出てきてくれた時にはもう……。
いやあ、面白かった。大きな山場とかがあるってわけじゃないんですが、常に不安を感じさせる描写ばかりなので、緊迫感あふれる展開になかなか気を抜けませんでしたね。友情の温かさや切ないシーンに心痛むこともあるんですが、さりげなく恋愛要素もあるので、嬉しい。
特に、エルスペス。あんた、他人の心が読めるのに、なぜにそこまであの人の気持ちが読めないんだ?それ以上に、自分の気持ちに鈍いんだ?
最後のほうの展開にはニヤニヤしっぱなしでしたよ。
このお話は、原作では、シリーズ化されて、現在四冊刊行されているとか。今後はサスペンスな内容よりも、人間関係やら恋愛要素が強くなっていく予感がしますが、さて、どうなんだろう。個人的にはぜひとも続編の翻訳もお願いしたいです。
ミスフィットの秘密 (小学館ルルル文庫 カ 1-1)
イゾベル・カーモディー
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