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[倉吹ともえ] 沙漠の国の物語 風はさらう

沙漠に水をもたらす聖なる樹シムシムの種子を、ラビサが使者として、かつて砂嵐の町と呼ばれていたタラスファルに託してから三ヶ月の時が経っていた。タラスファルの復興と同時に、カヴルの過去の罪を明かすべく、それぞれの町の代表者が多忙を極めていた。そんな中、ひょっとしたら、自分は何の役にも立っていないのではないかと落ち込んでいたラビサの前に、盗賊の砂嵐旅団の頭領カヤルの陰謀の手が伸びてきて……

いやあ、いいですね。普段は天真爛漫なのに、ジゼットが関わってくるとなかなか素直になれないラビサや、何かとクールなのに、町の人にはラビサを気にしてることを見透かされてるジゼットの様子に、ニヤニヤがとまりません。お互い自分の気持ちに気づいてないところはお約束ですが、微笑ましく思えました。

そんなふたりを襲ってくるのはカヤルと、カブルに恨みを持つものたちでしたが、カヤルについては、切ないものがあったなあ。自分を裏切ったというジゼットへの怒りのみで動いてる姿はともかく、ふと立ち止まったときに、自分の境遇を振り返って、後悔と寂しさを募らすところがやるせないです。もし、あの時、母親のぬくもりを手にすることができたら……。今回の悲劇のひとつはなかったかもしれないと思いました。

一方、ジゼットは多忙なのに、自分は何一つ役に立ててないのではないかと悩んでいたラビサは、今回も大変な目に合ってましたね。サソリの群れに突っ込んだり、奴隷として売られそうになったり、踊り子にさせられたりと、よくもまあ無事でいるものだと関心してしまいます。

ただ、そこで出会った人たちとの交流を経て、今まで見えていながった視点に気づいていくところは、良かったですよねぇ。素直さもそうですが、こういうところで、キサという少女と出会える運も、「シムシムの使者」としての資質なんじゃないかと思います。それぞれの目的があるために分かれることになりましたが、自分の決意を見せたキサに思わずグッとさせられました。いつか、出会える時があったら、うれしいですね。

ジゼットはジゼットで、ラビサのために身を粉にしてがんばってましたが、まさか、女装までするとは思わなかった。ああ、なんて健気なんでしょう。ラビサが他の男に言い寄られて嫉妬するところとか、すっごい笑える。

ふたりの冒険は不安よりも楽しさのほうが多かったですが、それとは逆に、不安がどんどんと膨らんでいったのは、カブルそのものに暴徒の手が伸びてきたところですね。暴徒たちの言葉は根拠ないものでしたが、カブルは過去の悪事を自覚しているだけに、八方塞がりになっていくところに、ドキドキ。

ここで、力には力をと唱えていた大人たちの思いを、全力で吹き飛ばしたラビサの言葉には、本当に心打たれたなあ。シムシムを慈しむ心にもグッとさせられましたが、それ以上に、拙くともまっすぐな思いを言葉をにしたラビサに、成長した強さを感じました。

いやあ、面白かった。少女の成長と、過去の確執と、恋愛要素がきっちりとまとまった素敵な冒険物語でした。最後の最後で、うふふな出来事もあったりして、やってくれるぜ。ジゼットの言葉に、顔色をクルクル変えるラビサのかわいさを見たら、思わず手を出しちゃうのはわかるけど、思わず照れちゃいますね。
次は、かの連中が手を伸ばしてくると思いますが、ラビサとジゼットがどんな具合に、相手をするのかとても楽しみです。

沙漠の国の物語~風はさらう (小学館ルルル文庫 く 1-2) - 倉吹 ともえ

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