エノーラが十四歳の誕生日を迎えた夜、ママは屋敷に戻ってこなかった。心配になって探しに出たものの、一向に見つからず、エノーラは決意をした。まず地元の警察に捜索願を出し、そして、ふたりの兄に電報を送る。ロンドンにいるマイクロフト・ホームズと、ベイカー・ストリートにいるシャーロック・ホームズへと。だが、十年ぶりに会った兄たちは、温かみがなく、母は家出をしたのだと言い出して……
あのシャーロック・ホームズに歳の離れた妹がいるって時点で、手に取ることは決定してたんですが、読んでみたら素敵なミステリー風味の冒険小説じゃないですか。面白かったです。
母親が失踪する理由は何かという点については、十九世紀のイギリスという女性の地位が低い時代背景を知ると理解できてくるんですが、そんな母の失踪した手がかりが、暗号文から見えてくるあたりが素敵です。何で部屋に暗号が?という疑問についてもちゃんと理由があるんですが、それは読んでのお楽しみ(と、もったいぶるほどのことでもないけど)。
はじめは母に置いていかれたという現実しか見えなかったエノーラの前に、暗号を通して母の愛が見えてくるところが素敵でした。
シャーロックも歳の離れた妹に対して、鼻持ちならない態度を見せてくれるんですが、彼女の聡明さに気づいてからは、優しき兄のような視線を見せてくれたりして、ああ、いいお兄さんじゃないかチクショーとか思ったり。
ともあれ、母を捜しに家をエノーラもこっそり家を出るんですが、素直に逃げていればよかったのに、ちょうど目の前で、公爵家の子息が誘拐されたという事件の話を聞いてしまったら、好奇心がムクムク動いてしまうのが、彼女らしいというかなんというか。
普通の乙女にはない発想と、絵を描くのが好きという観察眼で、いくつかの疑問点を見つけて……というところから、なぜか誘拐犯たちに狙われてしまうんですが、おびえながらも度胸は一人前で、機転を利かせて、逃げ延びる姿はほんと痛快。犯人から逃れて、家に連れ戻そうとする兄たちの手から逃れて、事件を解決に導いてと、いやはや大活躍じゃないですか。
シャーロック・ホームズは非論理的だとか、男性より劣るとかいって、女性をばかにしていたけれど、「論理的」に考えたら、ぜったいにわからないことがこの世にはある。女性には、じつはめくるめく暗号の世界があるのだ。
まさに女性ならでは、ですね。
母から娘への最後の暗号文に、信頼と温かさを感じました。
いやあ、楽しかったです。事件の解決やシャーロック・ホームズを出し抜くところもよかったんですが、夢見た都会の現実を知って、幻滅することがありながらも、しっかりと前を見据えるといったエノーラの成長する姿も素敵でした。
これ続編あるのかなあ?できれば、シャーロックとコンビ組んで何かやってほしいなあと思うんですが、さてさてさて。
エノーラ・ホームズの事件簿―消えた公爵家の子息 (小学館ルルル文庫 (ルス1-1))
ナンシー・スプリンガー 杉田 七重
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Comment:2
- ジャラル 2007-10-14 (日) 14:29
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実は「ホームズの身内がビクトリア時代を舞台に活躍する」というのは、日本のマンガで最近出版されまして、「クリスティ・ハイテンション」(新谷 かおる作、ホームズの姪)「ホームズ・ツインズ!」(辻野よしてる作 シホームズの甥と姪)、その類かなと思いましたが、さすが海外の作家らしく、当時の女性蔑視の傾向やホームズの身内に画家がいる等の情報はしっかり取り入れられていました。マイクロフト(この人、某作品では、実は英国情報機関MI6の長官「M]ではないかと言われています)に捕らえられると、嫁か寄宿舎に間違いなく入れられるエノーラがどう活躍するか、私も続編があれば一読したいです。
- deltazulu 2007-10-15 (月) 10:13
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マンガでも出てたとは知りませんでした。ジャラルさん、物知りすぎです!
続編読みたいですよねー。海外では出てるのかしら?もし出てるなら、翻訳お願いしたいところです。







