「逃がした。なんなんだ、あの化け物は」
「セマーニ世界でも滅んだと思われている吸血鬼だ」
「吸血鬼?ふん」
肩で息をしながら、マトバが鼻を鳴らした。
「俺は新手の痴女かと思ったぜ」
妖精や魔物などが存在する異世界のセマーニと地球がゲートで繋がり、交流を経るようになった時代。あちらの王国の準騎士であるティラナが、こちらのサンテレサ市警察に入り、ベテラン刑事のケイ・マトバとコンビを組んで、事件に立ち向かうシリーズの第二弾。第一弾は二時間ドラマよろしく長編でしたが、第二弾は、50分ドラマが二本 — つまりは短編二本が収録されています。吸血鬼が現れるお話しと、エロ本窃盗団を追いかけるお話し。
おっさんと少女というコンビが良い感じの距離感を描いてて、とても楽しい。マトバからすればティラナは美しくとも子どもであり、ティラナからしたら自分を認めて欲しいと思い、つい突っかかってしまう。そんなやり取りにニヤリとさせられます。いわゆる恋愛感情ではないと思いますが(少なくともいまは)、少しずつではあるけれど、相棒という感じになっていく展開がいいです。
吸血鬼話はとてもサスペンス。どちらも相手の力を把握していないから、マトバたちは伝説以上の不死身っぷりを見せられておののき、吸血鬼もまた銃の力に押されてと、どちら側から見てもドキドキする。
そんな中、頑張ってもマトバに褒められないで拗ねてみせるティラナが可愛いんだな。そうだよねー、ありがとうの一言ぐらい言ってくれてもいいよねー。小さく「ばか」と言っちゃうから、にこにこ。
そんな彼女に共感しちゃうのが、監察医のセシル。元マトバの恋人だったというだけあって、不満はいろいろ持ってるようですね。でも、別れたくて別れたって感じじゃないから、いまだにちょっぴり思ってるようなそぶりもあって、ティラナの相談に乗りつつ、けしかけつつ、匂わせつつ。ティラナが恋をするかどうかわからないけれど、三人の距離感が見せる関係が、とても好きです。
二編目となる「Need for Speed(10万ドルの恋人)」は、エロ本窃盗団を追いかけるお話しで、ちょっぴりコミカル風味。他の警察官仲間も出てきて、楽しい限り。なんだかマトバは意外にモテてるんじゃないかと思ったりするシーンもあったけど、さてどうなのかしら。
純粋なティラナが恥ずかしさと、初めて車を運転する興奮で大騒動になってしまいましたが……まあ、愛車がアレしたマトバは不運だったとしか言いようがないですが(笑いながら)、無防備だったティラナが少し変わり、でもマトバの傍にいる暖かさみたいなものが伝わってきて良かったです。
これまでは、Z文庫で出版してたお話しのリライトでしたが、次からはオリジナルになるそうですね。とても楽しみでなりません。
コップクラフト2 (ガガガ文庫)
賀東 招二
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