「山手なんかどうでもいいに決まってんだろ。こんな陰気な土地、勝手に滅びりゃいいんだ」
新之助はつまらなそうに言う。
「でも、誰かの我侭で滅ぶのは違う。お袋みてぇになんの関係もないのに割り食う奴がいる。兄貴みてぇに必死に働いてる奴がいる。……親父みてぇに何かを残そうと頑張ってる奴がいるんだ。それを手前勝手な理由で潰すなんて許せねぇんだよ」
見鬼の才に悩まされていた藩士の新之助が、拝み屋ふくろうと、奇妙な力を持つ娘ましろと出会い、江戸から山手までの道中を共にしていたら、あやかしに襲われて……という江戸時代を舞台にした妖怪退治もの……って言っていいよね?
これはとても面白かった。
どうにもうさんくさいふくろうと真面目な新之助のやりとりがとてもコミカルで、そこに新之助大好きなましろが入り込んでくるから、道中模様がとても楽しい。
あやかしを知らない新之助のために、ふくろうが語る話も興味深いんですよね。はじめはうさんくさく思ってたんだけど、だんだんと、ふくろうが新之助に魅力を感じていく様子が伺えてくると、僕の中で急に信頼が厚くなるから不思議なものです。
新之助に刺客が向けられたとき、それが人であれ、あやかしであれ、「斬る」ことに躊躇っていた彼に、時に同家を演じていたふくろうが、諭したシーンが印象的だったなあ。普段は道化を気取ってるだけに、そのギャップが魅力なのかもしれない。
そんなふくろうや、ましろという、共に歩む者の存在を身近に感じるたからこそ、剣を握ることができる。その覚悟が生まれていくところがよかったです。
他にも、朴念仁がだんだんとわかっていくところとか、寡黙な父が見せた心とか、とても心を掴まれるシーンが多かったなあ。
最後はちょっとご都合かなと思わなくもないけど、ハッピーエンドで終わってよかったです。
いやあ、面白かった。これはオススメ。
新たな仲間が増えたのはいいけど、いい感じに三角が生まれてくれて、とても楽しいことになりそうな予感がヒシヒシとしてますね。ふくろうの正体も気になるし、これはぜひとも続きをお願いしたいところ。
第3回小学館ライトノベル大賞ガガガ大賞受賞作。
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