「なあ――」
喉の奥から、心の奥底から、無理矢理搾り出すように言った。
「おれは、壊れてるのか」
神野江は立ち止まり、しばらく空を見つめた。それからゆっくりと振り返り、わずかに頭を振る。
「思い出を大切にするから、人なんだと思う」
ヘタレのくせにオカルトマニアな渡崎トキオのクラスに、美少女だけど、電波な神野江ユイが転校してきて……幽かなるものが近づいてくる恐怖を味わえるホラーテイストな青春物語。
これは最高に面白かった!
怖いもの見たさじゃないですが、ヘタれのくせにオカルトものが好きなトキオが、霊なんていないと尊敬する先輩に断言されてやさぐれた矢先に、一歩、何かが引き寄せてくるような、そんな一言をユイが告げて。十年前、トキオがトラウマとなった幽霊屋敷を訪れたとき、見えた「逆」を知らされたときの驚きといったら!
たった一言で、ここまで鳥肌が立つとは思わなかった。背筋がゾクゾクする感覚を味わっちゃったら、もうこの作品の虜ですよ。
関わってはいけないと思いながらも、ユイの行動に流されてしまうのは、なぜかというのは不思議に思うところもあったんですが、過去がトキオにどこか闇を抱えさせていて、さらには、言霊というと語弊を受けるかもしれませんが、思い出したくない過去だからこそ、無意識のうちに言動が制限されてしまう、誘導されてしまうトキオの様子を見ていたら、ああ、こういう不安定さがあったからか……と納得していたら、まさかあんな真実が突きつけられるとは!
父親。鉄塔。その二つが結びついたとき、心の崩れる音が聞こえたように思えました。あれはすごかったなあ。
普通であれば、あれで心が壊れてしまったと思います。でも、側にいたのが同じように闇を抱えた少女で、踏み込むことを知っていて。暗く、押しつぶされそうな悪意の中に足を踏み入れて、戻ってこれたトキオと、そこで初めて心からの感情を見せたユイが印象的でした。
いやあ、面白かった!文句なしでベスト級ですね。
心霊現象ものだったら怖いなんて思わないんですが、それでもゾクっとさせられたのは、隙を突くように見せられるからだろうなあ。ホラーテイストな雰囲気もさることながら、青春ものとしても素晴らしいものがありました。
お話としてはきっちり終わってはいますが、他にもこの二人のコンビの活躍が示唆されていたので、ひょっとしたら続編出たりするんでしょうか。出てくれると嬉しいな。
幽式 (ガガガ文庫)
一 肇
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