中学時代、ある趣味によってクラスメイトから白い目で見られていたことを後悔した佐藤一郎は、高校進学を機に、普通の人を目指すことにした。目立たず埋もれず孤立もしない。そんな立場を目指し、それはうまくいっていた。あの日「魔女」が現れるまでは。
一目見たときは、美しいと思ったけど、実は、自分は魔女だという自分設定を撒き散らす妄想少女・佐藤良子に付きまとわれる羽目になってから、クラスの立ち位置は一変してしまい……
マンガや小説の登場人物にあこがれて、いろいろイタしてしまうというのは、結構あるような気がするんですが(ドラゴンボール世代なら、かめはめ波の練習ぐらいするよね?)、それはともかくとして、普通は心の中に秘めておくような妄想を、嬉々として人に言ってしまう「妄想戦士(ドリームソルジャー)」だった過去の自分と縁を切り、高校デビューを計った元妄想戦士の少年が、自称魔女という妄想戦士の美少女に出会って、というボーイ・ミーツ・ガールです。
これは面白かったなあ。
イタイ過去があるから、普通の人に見えるよう、必死になって演技していたのに、空気を読まない良子のおかげで、クラスメイトから同じ妄想仲間に見立てられて、あっさりと陥落していくところは、やるせないものがあったりするんですが、必要以上にシリアスにならないから良かったです。まあ、それはそれで物足りなくもあるんですが。
無視される辛さとかあるんだけど、一度通った道であることや、そんな心配をしている暇もないぐらい、良子がかき回してくれるってことが、一郎からしたら不幸中の幸いだったんだろうなあ。いや、それ以上に、仲間的な存在がたくさんいたのが良かったのかも。なんせ、クラスの半分ちかくが妄想戦士なんですからね!
クラスでも目立つ所謂「貴族グループ」の仲間になれるよう目指していたのに、本人にやる気はなかったとしても、気づけば「佐藤グループ」として、妄想戦士たちのリーダー的存在になってるところが大いに楽しかった。
だんだんと分かり合える人たちが出てくるのも良かったです。
ただ、うまくいっていても、心の傷はやっぱり残っていて。
良子の妄想に付き合っているうちに、何とはなしに彼女と過ごす時間が離れがたくなったのに、突如突きつけられた自分の過去のせいで、思わず彼女を傷つけてしまうところには、こう、どちらも、いっぱいいっぱいだという心が伝わってきて、痛いものがありました。
でも、最後には、彼女のために、すべてを投げ捨てて立ち向かった姿が、格好悪いのに格好よくて……素敵でした。
「……儀式、失敗した。一郎のせいだ」
彼女が戻ってきてくれたシーンが、とてもよかったです。
いやあ、面白かった。
爽やかにイタイラストがまた素敵でしたね。これはいい青春物語です。
何気に一番いい位置を占めていたのは担任の先生だった気がしますが、そんなオチがあったのかよ!と思わず苦笑してみたり。まあ、幸せならいいってことなのかな。
このあと、彼と彼女がどうなっていくのかはわかりませんが、きっと……と思わせてくれるものがありますね。
AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~ (ガガガ文庫 た 1-4)
田中 ロミオ
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