「だが、本当に奇妙な事態だ」
ギギナの視線を受け流すように、ラルゴンキンがぶやく。
「三日前にもオダル退役軍人間に禍つ式が出現しているし、今日も一体を片付けてきた。今月に入って禍つ式の出現が四件も続いている」
なにかに思いをめぐらすように、巨漢が続けた。
「これが、何かの前触れでなければいいがな」
竜や巨人や禍つ式などの<異貌のものども>を相手取ることで糊口を凌ぐ攻性咒式士、美貌の腹黒戦闘馬鹿のギギナと、不運と貧乏くじを引くガユスが、エリダナ町での事件を解決していくシリーズの第二弾。今回は<禍つ式>による連続殺人事件と、天才と名高いレメディウス博士の誘拐事件についてのお話です。
ああ、もう。なんて残酷なんだろう。
ギギナとガユスの陰険漫才とか、ギギナすら逆らえないジヴのお怒りな姿とか、貧乏くじを引きまくって、無理難題を押し付けられていくところとか、すっごい面白かったのに、読み終わったあとには、そんな楽しいシーンがまるで思い出せないほど、心が痛みました。特に、レメディウス誘拐事件の背景が見えたときは……
なまじ、誘拐犯側にいた少女ナリシアとのやり取りが、微笑ましく、温かいものであったが故に、絶望を与える独裁者の毒牙に、心を抉られる思いでした。悪意が更なる悪意を生んでいく巡回に、気分が悪くなりましたよ。
で、事件に巻き込まれていくガユスとギギナは、同業者であるラルゴンキンの咒式事務所の面々と共同戦線を敷いて、謎に挑んでいくんですが、爪弾きにされながら信頼もされているという、相変わらずな立場はさておき、時折ラルゴンキンたちを見ては、懐かしむガユスとギギナが印象的でした。
かつてふたりが所属していたらしいジオルグ咒式事務所でいったい何があったのか、すっごい気になる。
同時にガユスのかつての恋人であったというクエロの話しも気になりますが、このあたりは、外部よりも当事者であるジヴのほうが敏感で、今の今まで抱きしめあっていた二人に溝が生まれていくところには、やるせないものを感じましたけど、でも、この後悔があったからこそ、ガユスは強大な敵と戦えたんですよね。
弱いところを見せつつも、それを支えに立ち向かうガユスと、決して折れず前へと突き進むギギナが見せてくれるコンビネーションは、今回もよかったです。
それにしても、事件が解決した後に見えてくる真実は、きっついなあ。すべてが手のひらの上の出来事だというのは、前作でも感じたことでしたが、今回もか。しかも、上には更に上がいることを感じさせてくれるんだから、困りもの。
戦うための力という点では、ガユスたちもかなりのものだけど、大局を見渡しながらの頭脳戦となると、例の人たちには、まだまだ及ばないようなので、今後そのあたりをどう対処していくのか楽しみですね。
最後に声だけを聞かせてくれた彼女の存在も気になるばかりです。
されど罪人は竜と踊る 2 ~Ash to Wish~
浅井 ラボ
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Comment:1
- ジャラル 2008-06-22 (日) 13:55
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前回はドラゴンで今回は<禍つ式>、いわゆる「デーモン」という連中が相手です。しかし、この話はどんな化け物よりも人間が、その人間よりも企業や国家の方が遥かに怖い、というのを実感させてくれますね。
順番で言うと次回でガユスは只管不幸な境遇になります(苦笑)。ガユスのかつての恋人、そして二人の属していた凄腕ぞろいのジオルグ咒式事務所での破局については、スニーカー版でもまだ未発表でしたので、この機会に出版して欲しいものです。




