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[犬村小六] とある飛空士への追憶

レヴァームの次期皇妃となるファナ嬢が住んでいるサン・マルティリアに、天ツ上の戦火が舞い降りてきた。このことを受けたカルロ皇子は、愛しい許婚を救うべく「第八特務艦隊」を送り出したが、大々的な宣伝は、敵の絶好の的となり、サン・マルティリアに救いの船は来なかった。全滅の事実を明かすことは皇家の沽券に関わる。だが、ファナを放置するわけには行かない。
そこで軍上層部が考え出した案が、ただの一傭兵であったシャルルの運命を変えた。
「次期皇妃を水上偵察機の後ろ席に乗せ、中央海を短期敵中翔破せよ……」

レヴァームと天ツ上の両国の血を引くことで蔑まされていた飛空士の少年シャルルが、幼いころ一度だけ会ったことのある美しき令嬢・ファナを乗せて、一万二千キロの空の旅へと出るお話です。

なんと切なく、なんと温かくさせてくれる物語なんでしょう。それでいて、空の美しさと、ドッグファイトの緊張感も見せてくれるんだからたまりません。ああ、もう最高にすばらしかった!文句なしで大絶賛。

中でも良かったのは、ファナの心情の変化ですね。皇子に見初められたことで、四六時中、誰かに見張られるような生活となったことから、心を閉ざしていた少女が、空を見て、海へもぐり、魚を釣ってと、五日間の旅路の間に、自然と触れ合う機会に恵まれたことが、どれほど彼女の心を癒してくれたことか。

何より、お嬢様と誰もが持ち上げて、感情を隠したまま接してくる中、丁寧かと思えば怒ったりと、持ち上げることなく生の感情を伝えてくれる少年との出会いで、感情を取り戻していく姿が、ほんと素敵でした。

残り一日となった日の夜。酔った勢いで彼女が告げた言葉は、あまりにもまっすぐで……、現実的でないとわかっていながら、それでも一抹の夢を見てしまうシャルルの想いが切なくてたまらなかった。

ボーイ・ミーツ・ガールものとしてもいいけれど、空に惹かれたものたちの生き様や空戦の迫力を楽しむお話としても良かったですね。例えるなら「紅の豚」のような、とでも言うんでしょうか。
命がけで戦った相手であっても、敬礼して別れる、そんな男たちに痺れました。

いやあ、ほんと良かったですね。
最後に見せてくれた彼の空の舞は、ほんと印象的で、かつて、少年が少女との出会いを糧にしたように、その舞こそが、その後の少女の糧となったのではないかと、そう思いました。

超オススメ。

とある飛空士への追憶- 犬村 小六

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