「だがもっと遠くを見ろ、一止。そんな感傷に流されて大事な人生を棒に振るのか。もっと高いところを見ろ」
「民間病院の一般内科医は、大学病院の専門医より地位が劣るというわけだな」
「そういう角のある言い方をするな。だが一面の真理ではある」
医学部を卒業した後、地方の病院に勤務して五年。医者不足から、悩眠る時間すらろくに取れない毎日を過ごすある日、大学の医局から来ないかと誘いがあった。医局に行けば最先端の技術を学び、休む時間も取れる。だが、「手遅れ」とされた患者さんと向きあうような医者がいてもいいのではないか……という2010年度本屋大賞二位の作品です。
これは温かく涙するお話でした。
夏目漱石を敬愛するちょっと変わった栗原一止は、微妙にズレてて、ユーモアある文章にクスっとさせられますが、本人はいたって真面目で、医師としてどうすべきかをいろいろ悩むし、患者さんが亡くなれば、平気な顔をしながらなかなか浮上できなかったりするんだけど、そんな彼を支えるのは、実は患者さんだったってのは、非常に印象的でした。
もちろん、同僚や看護師さんにも支えられているし、愛妻にはこれ以上ないぐらい元気をもらっているけれど、築き上げた信頼関係から、患者さんが伝えてくれる言葉や感謝など、様々な思いは、医師として時に自己嫌悪に陥る彼を支える力になっていたと思います。
いろんなエピソードに微笑んで、泣かされて、温かくなったなあ。僕が一番好きなエピソードは、酔った天狗のお話です。こんなふうにより添える人がいたらいいな、こんなふうに年を重ねていきたいなと思いました。
今の場所から離れ、最先端の技術を学び、しっかりと休みも取れるというのは、仕事としてまた家庭人としてより良いことだと思います。それでも迷ったのは、いまのように人と向きあっていきたいという思いがあったからでしょう。
貧乏長屋に住む人たちとの別れ、助からないとわかっていても精一杯の幸せを感じて欲しいと願い動く。そこには熱い思いがあり、美しい景色があって、じわりと浮かんだ涙が止まらなくなりました。
もうちょっといろいろ書いて欲しかったなと思いますが、とても良いお話でした。自分も真っ直ぐ生きていけたらいいな。
神様のカルテ
夏川 草介
Home > 文学・歴史・その他 > 神様のカルテ / 夏川草介
Trackback:0
- TrackBack URL for this entry
- http://www.booklines.net/mt/mt-tb-t.cgi/3708
- Listed below are links to weblogs that reference
- 神様のカルテ / 夏川草介 from booklines.net







