「わてらの裏家業が世間さまにバレたら、どうもならんで」
「この人の口から漏れなければいいわけでしょ」
サヤカは、足もとに倒れて不安そうに彼女を見上げている隼を、チラッと見た。
「なにか考えあるのンやな」
コクッ、とサヤカはうなずいた。
「うちの社員にするの」
夏休みに自転車で全国半周をするという目標を掲げて、あっさり頓挫しそうになった少年・風早隼は、お土産話がてら観光地である三重県の忍者屋敷を訪れたが、くノ一の格好をしているガイドさんに一目ぼれしたら、なんと彼女は本ものの忍者で……スケベ心が災いして忍者の秘密を知った隼が、みならいとして忍者修行させられ、美人くノ一のサヤカと共に任務に駆り出されるお話です。
忍者云々もいいけれど、一番の楽しみは恋の行方です。
飽きっぽい上に言ったことすらやり遂げられない隼は、だらしないのに妙に親しみがわくキャラで、だめなことがあっても、しょうがないなーと思ってしまうんですよね。本来であれば、時に法に触れることもある忍者を派遣する人材派遣会社WWI(普通の派遣も手がけてる)の秘密を知ってしまったことで、人生さよならするはずだったのに何とかなったのは、彼が秘密を知るきっかけとなったサヤカが手を差し伸べてくれたおかげでしたから。男を見る目が……と思ったけど、後々を考えると、スケベで単純バカだけど、まっすぐな男だから、あながち悪いわけでもないのか。
仕事仲間になってしまえば、秘密を漏らすこともできまいとして、忍者修行させられて、つらくて逃げようにも忍者の里から逃げられるほどの能力があったらねぇ?それでもいろいろ試行錯誤しては、一番えらくて、ちょっぴり気色悪くて、でも頼りになる、圧倒的存在感を持つ婆ちゃんにいじめられるやり取りがとても楽しかった。
夏休みが終わってようやく家に帰されたら、待ち受けていたのは幼馴染の美樹のお怒りでしたが、彼女もね、なんだかんだで隼が気になってるのに素直になれないから可愛いんだ。彼のためにいろいろ頑張っても、「腐れ縁」と思われてしまうから、まったく残念です。さらには、同じ学校に転校してきたサヤカの様子に、もしかして隼に興味を持っているんじゃ……と思うんだから、さてどうなるかとニヤニヤ。
肝心のサヤカがどう思っているのかはハッキリわかりませんが、東京にやってきて隼と共に任務を行うところでは、いい雰囲気だったようにも思うし……何気に隼の使い方がうまいよね。
サヤカには親が決めたフィアンセの服部半蔵がいたり(でもサヤカは好きじゃない)、美樹を好きだという隼の友達が出てきたりと、恋の行方は楽しいことになっています。
ただ、いろんな事件が実はひとつに……みたいな展開になったときのところでは、ずらーっと説明ばかりになってたのがちょっとね。せっかくだからうまく分けてくれればよかったのにと思ったりしました。
とりあえず、「そこおろせにょら」のことが気になるので、次なる応用編も手に取りたいと思います。あと、もうちょっと恋を進展させてくれたらうれしい。
みならい忍法帖 入門篇 (集英社文庫)
宮本 昌孝
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