それは、迷い猫でも、迷い犬でもなく。どこからどう見ても、人間の女の子だった。
「拾ってきちゃった」
てへ、と微笑みながら、軽く言い流す乙女姉さん。
「名前は希ちゃん。今日からうちの家族よっ」
お人好しで人助けが趣味な姉・乙女が美少女・希を拾ってきたおかげで、巧の苦労はさらに増えて……素直じゃない幼馴染の女の子・文乃に、悪友である駄目オタ・家康、善良な脳みそ筋肉男・大吾郎を交えて繰り広げるハイテンション・ラブコメ物語。
これは面白かった!
はじめは、二言目には「二回死ね」という文乃になんだかなあと思ってたんだけど、暴力的な態度の影に、素直じゃない様子が見え始めると、もうニヤニヤが止まりません。ツンとしながら、ほめられるとつい得意げになるあたりが可愛くてしょうがない。
友人たちとの様子も楽しくて、いや、たぶん、目の当たりにしたら、何バカなことやってるんだろうと思うんだろうけど、くだらないそういうバカなことって、友人たちと一緒だと楽しいんですよね。そういう雰囲気がとても伝わってきて、何となく昔を思い出して懐かしい気持ちになりました。
で、乙女が拾ってきた希。無口で無表情で、何かわけがありそうで。過去は詮索しすぎないようにしながら、気にかけつつみんなで行動していくうちに、いつしか希の心に居心地のいい空間が生まれていくところがいいんだなあ。居心地が良くなると、迷惑をかけるかもしれないと苦しむ希と、そんな希の気持ちがわかってしまう文乃と。
ふたつの温もりがとても心安らぐものがあるだけに、少女が駆け出していくところは切なくなるんだけど、彼女のためにみなが動いて、少女の迷いを抱きしめて。最後に笑顔を取り戻す展開が素敵でした。
いやあ、面白かった。ラブコメでありながら、家族愛も見せてくれるすばらしい作品でしたね。嘘と本気の伏線が生きてくところには、にやりとさせられます。読み始める前と、読み終わったあとで、こんなにも副題のニュアンスが変わるなんて思いもしませんでしたよ。
一冊ものとしてお勧めかも。
迷い猫オーバーラン!―拾ってなんていってないんだからね!! (集英社スーパーダッシュ文庫 ま 1-1)
松 智洋
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