「……今、何と言いました?」
「妾に二度言わせるな」
鼻を鳴らし、耳の穴をほじり、大袈裟に溜息をついた上で、もう一度口を開く。
「貴様の親父に会いに行く」
第一王女にして、『鉄球姫』とまで呼ばれるようになったエミリーと、彼女を守るべく護衛騎士となったグレンが、王位を取り巻く陰謀に巻き込まれていくシリーズの第三弾。今回は、エミリーが、彼女を狙っている黒幕・ノーフォーク公ジョセフに、会いに行くと言い出すお話です。
いや、ほんとは二巻でもういいかなと思ったんですよ。面白くはあるけれど、一巻目と同じパターンだったし、陰謀劇にはならなそうだし……と思って、発売直後にはスルーしてたんですが、うららさんの感想を読んで、思わず手にとってしまいました。
いやあ、すごかった!まさに噂にたがわぬ展開でしたね。手に取るきっかけをくれたうららさんに感謝。
自分の命を狙う者に、直接会いに行くと言い出すんだから、どうなるのか、やばいんじゃないかと不安で不安で仕方なくて、共についてきた仲間たちのやり取りが楽しければ楽しいほど、不安になっていくのは、もしかしたら……という思いが、心のどこかにあるからなんでしょうね。前二作で植えつけられた印象が、ここまで響くとは、いやはや、恐ろしい。
強引でありながら、確実に一点突破していくエミリーの策(というほどでもないが)のおかげで、懐に入り込めたはいいものの、なかなか予断を許さないあたりが、さすがノーフォーク公。このあたりにもどかしさを感じるのは、エミリーにしろ、グレンにしろ、一直線な人ばかりをみてるからなんだろうなあ。
ここで登場したグレンの妹が、とても面白かった。グレンじきじきの姫教育の成果がここに!ペシンという単位もさることながら、なんだこの歪んだ愛情のようなものは。
ペシンを楽しみに待ち受ける妹の未来を思うと、なんか、こう、アレですね(なんだよ)。
隣国ヴェルンスト王国が攻め込んでくるという大きな出来事がありましたが、そんな中を、存在そのものが多くの派閥を生んできたエミリーが大きな決意を持ち、国王や諸侯との関係をよくしていこうと奮闘する姿が、印象に残りました。姉の意志を目の当たりにした国王ガスパールの言葉もまた強さを感じて、次は外との戦いに視点が移るのか……と思っていたら、まさか、まさか!
最後の一行を読んだとき、愕然としたのは僕だけじゃないはず。なんだ、この破壊力は!
たった一行を幾度となく読み返し、その意味を知ったときには、もう……
完全に続く形でお話が終わっていますが、こうなってはもう、エミリーがどこへ向かうのか予想もつきません。ああ、どうなってしまうんだろう。来月にも続編が出るとのことなので、首を長くして待ちたいと思います。
花園のエミリー―鉄球姫エミリー第三幕 (集英社スーパーダッシュ文庫 や 2-3)
八薙 玉造
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