黒の末裔であるフェイの一族には、不思議な力があった。仕事に関わる器具を人化して、「患者」である動物やモノ、彷徨える魂を治療することができるのだ。
今日も今日とて、カルテのルルや体温計のヒスイ、聴診器のジーナなどと一緒に「患者」を待ち受けていたら、飛び込んできた子ギツネが依頼してきたのは、自分の怪我ではなく、人間の病気を治してほしいというもので……
動物でもモノでも「彷徨える魂」でも、足を踏み入れれば、患者は人間になり、治療を受けられるという診療所のお話です。
はじめの子ギツネと病弱な少女の話がとても良くて、ああ、なんと優しい物語なんだろうと思ったら、その次からはちょっと話が変わって、医者と患者のお話というよりは、医者とその周囲のモノたちの成長物語っぽい感じでした。いや、どちらも素敵なお話だったので、文句ないですけど。
まだ新米ということもあって、なかなか思うとおり「彷徨える魂」を「患者」とすることができないフェイですが、医者としての心構えなどを導いてくれた町の老医者の言葉を胸に抱き、協力者として人化したモノと協力し合って、ひとつずつ問題を乗り越えていくところが、とても良かったです。
個人的に一番好きな話は、フェイの幼馴染であるロティのお話ですね。
幼いころ、共に遊んでいたのに、大きくなってからは、身分やすれ違いなどから、フェイに話しかけられなくなったお嬢様の気持ちが、切ないだけに、ちょっとした偶然から、昔に戻ったような冒険譚を繰り広げたときのロティの高揚感が、とてもよく伝わってきました。
ああ、なんと微笑ましいんだろう。
お互いの家に纏わる話については、今のところ気づいていないみたいなので、事実が明かされたときには、双方で大きな衝撃を受けるかもしれないけれど、それでも、ふたりならきっと手を取り合って乗り越えていけるんじゃないかな。
きっとそのときが、贖罪の終わりじゃないかと思ってみたり。
いやあ、温かく優しいお話でしたね。
これはぜひとも続きを読んでみたいですが、シリーズ化されるのかしら?
めでぃかる!
神代 明
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