妾腹の子とはいえ、貴族の中でも名門のコントラーリ家の末娘として生まれ、何ひとつ不自由せずに生きてきたかに見えたマリアは、大きな不満をひとつ持っていた。それは「女はなにも手にできない」という現実。兄たちよりもはるかに才覚を持ちながら、あと二年もすればいやでも嫁がされることになる。そんな人生はまっぴらだ。ならば、家を、しいてはこの国を手につかむために何をすればいいか。
そして十三歳の少女マリアは、侍女にして親友のアッシャと共に動き出し始めて……
女は子を成すための存在として一段低く見られる時代に、女の、それも少女の身でありながら、上を目指そうとする貴族の少女マリアと侍女アッシャの野望を描いたお話です。
いやあ、素晴らしく面白かった。わずか十三歳にして、なんて野望を持つんだと思いましたが、これほどの才覚を持っているのであれば、先を見通せてしまうのも当然か。笑顔で不満を隠し、どうすれば力を手に入れられるかと謀略を練る姿に、恐ろしく惹かれるところがあります。なんていうか、家族とか貴族に対しては、冷たい一面もあるんだけど、庶民に対しては、利用できるという一面もあるけれど、それだけじゃない温かさも感じるから、そのあたりが魅力的なのかも。
そんなマリアの光を支える侍女にして親友のアッシャが、また素敵なんだ。先が長い道のりを行くことについて、目先にとらわれそうになるマリアを、冷静に導く姿には、姉のような存在を思わせますが、時にマリアに知られぬよう行動するところに、彼女の闇を思わせます。上に行くには、闇を利用する必要があることは、マリアもわかっていますが、そういった部分をなるべく自分で被ろうとするあたりに、アッシャ自身がどういう立場にいようとするのかが見えてきますね。なるほど、光と影か。
父親がマリアの才覚に気づくあたりは、さすがこの家を切り盛りするだけあると思いましたが、それでも見逃したのは、油断なのか、それとも別の思惑があるのか。このあたりは、今後の注目ですね。っていうか、お父さんの秘密がアレだけに、どうなっていくのか予想できん。
政略結婚を持ちかけられたマリアに残された時間は、わずか二年。それまでにある程度の結果を出さねばなりませんが、時間を稼ぐために足を踏み入れた修道院で、あんな出会いが待ち受けているとは思わなかった。マリアとの読みあいに、互角以上のものを見せるあたり、さすが名高きヴェニエル家の娘だ、ラウラ。この人がいいポジションに来てくれたなあ。
才覚はあっても、まだ若く、知らないことも多いマリアが、開けた世界へ足を踏み入れ始めたときに、友人を得たことは、彼女の運というか資質というか、そういったものを感じます。
今回それを生かす機会は、小さな場所でしかありませんでしたが、これは大いなる道のりの第一歩を予感させますね。次にどこまで手を伸ばしていくのか、とても楽しみです。
征服娘。
神楽坂 淳
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- 「醜い?それは誰が決めたんですの?自分?」 「周りですよ。世界中が」 「私は?私は醜いですか?」 「君は美しい」 「どうしてそう思うのですか?世界が決め...
Comment:2
- ジャラル 2008-01-30 (水) 11:10
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先日読みましたが「主人公が野望を持ったお嬢様」「友人は有能な侍女」「舞台は中世のイタリア都市国家風」「家族は豪商で暴君の父、いけ好かない長兄と次兄、唯一の味方の三男」という設定が、まんま『野望円舞曲 』(田中芳樹&荻野目悠樹 著 出版 徳間デュアル文庫 )と同じなんですよね~。まあアチラはスペースオペラですが、ひょっとしたら中世イタリアの実在の人物(一家)を両者ともモデルにしているのかも知れませんね。
『野望円舞曲 』の方は、もう一人の主人公が三男で、田中作品お馴染み(笑)天才的軍事作戦家なのですが、こちらの三男はどうなのかな?この「中世ファンタジー版細腕繁盛記」次巻を楽しみにしましょう。
- deltazulu 2008-02-01 (金) 20:47
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あー、言われてみると「野望円舞曲」ですねぇ。気づかなかったです。何かモデルがあるのかもしれませんね。
こちらも三男はクセ者になりそうな気がするので、続きがとても楽しみです。







