歌姫であった亡き妻を偲んだトカットの領主グレゴリは、音楽祭を開催しようとしていた。音楽学校に留学中のサラ姫の姉、フィーナ姫とリリーナ姫も参加するとのことで、末姫サラもトカットへと向かった。久しぶりに会った姉たちの変わらぬ姿を喜んでいたサラだが、音楽祭本番を控えたリハーサルで、魔女クーファ役に化けたものが、双子姫を連れ去って……
生まれつき影がないため、何かと差別されながらも、まっすぐ成長しているサラ姫と、彼女を守るべく騎士となったオレ様な乳兄弟アーウィンが繰り広げる物語。今回は、さらわれた双子姫の行方を追ううちに、ふたりの距離に変化が生まれてくるお話です。
うん、いいですね。好きといっても、どちからといえば、兄妹のような感情だと思っていたのに、実は……ということに気づきつつある姫様が可愛い。本来であれば、王と一緒にトカットへと向かうのに、アーウィンが側にいてくれる機会が少しでもほしいと、単独(護衛少数)で旅する姿が健気です。
一方のアーウィンも、サラが幸せであるならそれでいいといいつつ、領主の息子がサラに近づくと、いらいらする自分に気づいたりして、いったい自分に何が起きてるんだと、ぐるぐる悩む姿ににやり。
アーウィンにドキドキするサラと、無意識のうちに甘い言葉を伝えてしまうアーウィンと。物語の中で、随所に現れる甘酸っぱくもいじらしいふたりの距離がたまりません。
ただ、お話としては、盛り上がりに欠けてたかな。領主の息子の話はともかく、フィーナの才能に嫉妬するヴィオレッタの葛藤は、もうちょっといろいろ読みたかったですし、ツァイについても、さらりと流されただけで、あれだけの切なさを見せてくれるんですから、もっと深く入り込んでもよかったのではないかと思うのは、僕だけかしら。
というわけで、面白くも物足りないところがありましたが、領主の幼い娘オリガの迷いや心の変化とかには、大人の優しい目線が感じられて、よかったです。
最後にはサラとアーウィンが、またひとつ距離を縮めてくれて、嬉しくなっちゃうものがありましたが……なんですか、あの巻末に収録されてるおまけの短編がすごかった。本編のほのぼのさとは一変して、ぞわぞわとさせられる。ひょっとしてこれから、そういう方面に物語が発展していくのかしら。
これは続きが楽しみになってきましたね。
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