朱実紗衣は、他者の血を求める吸血病であり、クラスメイトである鏡花とは、血液を提供してもらっていた。ある日、我慢ができなくなり誰もいない教室で、鏡花から血を貰っていたところを、鳴沢燈に目撃されてしまった。殴られ屋などという悪名高い男に対して、紗衣が口止めをしに言ったが、紗衣の妹である亜矢の彼氏だという志賀が燈に紗衣を襲おうという計画を持ちかけていて……
ヴァンパイアフィリアという症状の紗衣が、亡くなった彼女の妹の彼氏であったと妄想する男に狙われて、殴られ屋にして探偵助手をしている燈が、やばい仕事に関わっているうちに、紗衣の周囲へたどり付いて、みたいなお話です。
物語の初めがちょっと展開早くて、ヴァンパイアフィリアや殴られ屋などの話はこういう設定です、と書き並べたような印象を受けたんですが、そんな中、吸血行為に及んでしまう紗衣と提供者の鏡花の依存しあいながらも、不安定な関係は魅せられるものがありましたね。
ドラッグの売人と片腕が自分の意思に反して動き出すというエイリアンハンドの凶暴なNUW、妄想から紗衣を狙い始める志賀など、いくつかの話が徐々に絡み合ってくると、これがまた面白い。特に紗衣の吸血行為を知った志賀が、陰湿に囲い込んでくる様には、何ともいえない嫌らしさがありましたね。普通であれば嘘と見抜けるようなことでも、揺れてしまう心の弱さが伝わってきました。
まさか、事故で亡くなった亜矢までもが繋がってくるとは思いませんでしたが、ご都合というには、ピッタリハマってたなあ。いやあ、きれいでしたね。
不安定だった燈と紗衣が、自分の気持ちに気づき、前を向いて分かれていく最後は、ちょっとほろ苦い感じもありましたが、とても爽やかな気持ちになれました。さりげなくも、心理描写がとてもよくて、燈が自分の心のスキマの理由に気づいたシーンとか、ほんと良かったです。きっと、手紙に書かれた言葉は、燈の心に刻まれるんだろうなあ。
派手さは無いんだけど、好きだなあ、こういうの。次はどんな物語を書いてくれるのか楽しみですね。ドッペルさんの続きとかあってくれるととても嬉しいんだけど、さてさて。
吸血の季節
砂浦 俊一
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