神溺教団への利敵行為の容疑がかかっているヴォルケンが帰還する。その言葉に武装司書たちの雰囲気が変わったが、本人は言った。自分の行動は武装司書としての正義だと。彼の狙いは、図書館ではなく、館長代行の座から追い払うことだったのだ。
そのための証拠を集めている最中、ヴォルケンは真実を知る女性と出会い……
再び反逆の話ですが、モッカニアのような図書館相手ではなく、ハミュッツを相手取っての戦いです。正義のために立ち上がった若き司書ヴォルケンに、神溺教団で肉として扱われていた女性オリビアが絡んでくる物語です。
いやあ、今回はなんと言ってもハミュッツの悪党っぷりが素晴らしい。若かりしころから残忍で、残酷で、強かったんですねぇ。秘密保持のためだけではなく、遊び心があるところがいやらしいぐらい光っていました。
そんなハミュッツに立ち向かうには、ヴォルケンはあまりにも真面目すぎたというところでしょうか。彼が信じている正義の真実を知ってるだけに、徐々に追い詰められていく心理がむなしく思えてきます。
育ての親の一人、ビザクとの戦いが温かく切ないです。
強さという点では、オリビアよりも司書であるヴォルケンのほうが上なのに、ハミュッツが敵として認識したのは、オリビアでしたね。今や敵なしのハミュッツが、特別な力などなく、神溺教団の肉だった人間に対して、恐怖を覚えるとは思いもしませんでした。なるほど、こういう恐怖もあるんだなあ。
はじめはあまりオリビアに対して好意を持つことができませんでしたが、過去の記憶をなぞっていくにつれて、少しずつ浮かび上がってくる物語に惹かれてしまいました。目指すもののために、愛するもののために、まっすぐ進んでいく姿が、特にベンド=ルガーとの思い出は、とても切ないです。
最後のまさかまさかの展開には驚きました。ハミュッツの油断と、ちょっとした偶然と、オリビアの思いと。すべてが重なって起きたことは、まさに奇跡じゃないですか。
忘れないと誓った愛が、今後世界にどういう影響を与えていくのか、悪党っぷりを存分に発揮してくれているハミュッツは、今後どうしてくれるんでしょうか。とても、ワクワクさせられますね。次作が楽しみでなりません。
戦う司書と追想の魔女
山形 石雄
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