「おまえ、明日のパーティで何かやらかすつもりだな」
それも死ぬ覚悟で。
異様に生命力の強いユーベルメンシュが、それでも命を賭けて何かをしようと思うなら、それはよほどのことだろう。マックスが命を落としたのも、ロスマイヤー総帥暗殺という任務のためだった。
――暗殺?
「まさか、おまえ元首を殺すつもりか?」
23世紀。地球の治安部隊としてレジスタンスと戦っていた女隊長キャッスルと副隊長エイゼンが、火星の権力争いに巻き込まれていくというシリーズの最終巻。ヘルの強引な行動が始まり、頼みの綱であるクリューガーがどこかやる気がないおかげで、火星に内部崩壊がちらつく中、キャッスルたちが火星に戻ってきて……というお話。
ああ、もう涙がじんわりですよ。今まで冷たい人という印象の会った二人、クリューガーとエイゼンが、こんなに見せてくれるとは思いませんでした。
特に印象に残ったのは、やっぱりエイゼンかな。大切な人にほど破壊衝動を持ってしまうと思っていたのに、エーリヒの決意を聞いたとき、止めることなく成し遂げさせたあと、それを庇おうとしたのは、やはりキャッスルの兄、サウルのことが心にずっと残っていたからなんでしょうね。それを後悔と呼ぶのかどうかわかりませんが、そういう思いを見せてくれたことに嬉しくなり、でもその後に彼を襲った出来事に、クッと唇をかみ締めてしまいました。
そしてもうひとりの冷徹な男クリューガー。ユージィンという憎く、それでいて分かり合っている相手が、よりによってこの時期に姿を消してしまったことで、失意を感じるところには、もうだめかと思ったんですが、ボロボロの体でありながら、決してそれを悟られず、目的のために真っ直ぐと歩いていく姿は、非常に印象的でした。
もっと早く動いていれば、こんなに犠牲が出なかったとは思うんですが、それでも、彼がユージィンの元へと向かうときに見せた背中や、復活したユージィンを前にして見せてくれた逆転劇に、涙がじんわり浮かび上がりました。
決して輝かしい生き方とはいえないかもしれないけれど、かの人の心の芯というものを感じました。
ユージィンの暴走から、火星が引っ掻き回される中、ラファエルとキャッスルもまた、大きな動きを見せてくれてましたね。特にキャッスルの決意は……自業自得と言い切れないものがあるだけに、勇気という言葉では言い表せないものがありました。そんなキャッスルを応援するラファエルがよかったなあ。
「結婚」という言葉をさらりというキャッスルと真っ赤になるラファエルが、最後まで素敵でした。
いやあ、面白かった!
ひとり、またひとりと、謀略、暗殺、自殺、etcで、次々と倒れていき、最高のユーベルメンシュと謳われたラファエルまでもが、まさか追い詰められてと、最後の最後まで油断できない展開に引き込まれっぱなしでした。
また最後がいいんですよね。ああ、ラファエルって何て愛される人なんだろうという思いが伝わってきて、そんなラファエルともう一度恋をしようとするキャッスルの思いに、心から祝福したくなりました。
ふたりとも、今度こそ幸せをつかんでね、!
地上より永遠に―キル・ゾーン (コバルト文庫)
須賀 しのぶ
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