「ロゼウス様でしたら、ジール隊に圧力を掛けることも可能でしょうけれど、それでは外交上の問題になりますでしょう。彼らには自力で逃げて頂かなくてはなりません。……だから、時間と舞台が必要なのです」
「大祭に傷がつきますな」
呟いてからロゼウスは、くすりと笑った。あの二人の子供のためだ。多少の傷なら。
東大陸で忌み嫌われる存在である魔獣の宝珠が、しっぽのある王子、美しき姫、三つ子の子供たちと出会いながら、西大陸のトードリアを目指すという「子供たち編」の第三弾(ちょーシリーズとしては第十三弾)。今回は、やっとの思いでコバーリムにたどり着いたら、なんとふたりは指名手配されていて、というお話。
ああ、もう楽しいな。この二人の旅路は、見ているだけで心が和んできます。はじめに出会った老夫婦が、宝珠とオニキスのやり取りを見て、自分の孫に会いたくなってしまう気持ちがわかりますね。老夫婦側だけでなく、宝珠たちも、突然やってきて、指名手配されている自分たちに対して、普段どおり接してくれた老夫婦の優しさは、身に沁みたと思います。「ありがとうございます」と言うことができた彼女の気持ちに、じわりとさせられました。
指名手配されているとはいえ、コバーリムでは王宮の祭典が始まるって事で、騒ぎにまぎれてしまえば……って、そうそううまくいかないのは、魔族が相手だからといっていいかな。見つかって囚われては逃げ出して、そんな繰り返しが楽しく思えるのは、行く先々で、かつてダイヤたちとひと悶着あった人たちと会えるからですね。まさか司祭になってるとは!と思ったり、相変わらず看守やってるんだなあと思ったり。懐かしくてたまりません。
何よりその人たちが「あの二人の子供なら」と、できる限り手を尽くしてくれるところが嬉しいです。それほどまでにダイヤたちは愛されてたんだなあ。姿を見せなくとも(結構見せてる気がしないでもないけど)、その存在感が薄れることはありません。いいねー。
子供編に入ってから、オニキス、オパールときたから今回はサファイヤと会うんだろうなと思ったら、近くにいるのになかなか遭遇できないところに、やきもき。っていうか、スマート何やってるんだ……という思いもあったりするんだが、まあいいや。どうやらこのあたりは次の巻以降になりそうですね。
それにしても、オニキスと宝珠がいい感じになってきてるんですが(特にオニキスが!)、宝珠が一歩引いてしまうのが残念です。人と違うってことがそんなに引け目感じてるのかなー。気にしないでいいのに。オニキスも怒ったりしてないで、ちゃんと言葉で伝えてあげないとね。この二人がどうなっていくのかほんと楽しみ。
ちょー秋の祭典 (コバルト文庫)
野梨原 花南
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