太陽系が手狭になり、大規模な惑星開発が行われて、夢と希望を胸に抱いてシャトルに乗り込んだら、なんとそこは欠陥惑星……。酸の雨が降り、スペーススーツを着込まなきゃ登下校もできない。いつかは修復されるかもしれないけれど、それがいつになるかわからない毎日に鬱屈するものがあったけど、その日まで、僕らはまあまあ平穏な日々を過ごしていたんだ。あの日、地球から転校生が、アサヒがやってくるまでは……
欠陥惑星で生活していた小学生たちが我慢ならぬと立ち上がる「僕らに降る雨」と、「僕らに降る雨」で転校生としてやってきたアサヒの母との別れ、父との出会いを描いた「ウォーターソング」が収録されている物語です。
「僕らに降る雨」は、ノベル大賞佳作受賞作品を加筆、訂正したものらしいですが、これはいいですね。美少女で、勉強もスポーツもできちゃうスーパーガールが転校してきたことで、クラスの男女が真っ二つに別れてしまうんですが、原因の大元をたどると、大人の都合に振り回された子供たちの思いがあるわけで。アサヒというきっかけは、衝突を起こすことにもなったけど、溜め込んでいた思いを吐き出すことにもなって、立ち上がっていく展開が、とても面白かった。竹岡版ぼくらの七日間戦争ってところかな。友達のために怒れる子供たちのまっすぐさが素晴らしいです。
アサヒという存在が彼ら彼女らを動かしたわけですが、いくらすごくでも彼女もまだ小学生で。転校を続ける生活をする彼女は、言葉にこそしないけれど、寂しいという思いは抱えてて。
再び転校するとき、アサヒに立ち向かうことを教えられた子供たちが、アサヒに告げた言葉が忘れられません。
そんなアサヒの幼いころのお話が「ウォーターソング」でした。ジャンク屋な惑星で、歌姫である母と暮らしていたアサヒの前に、ヒムロという男が現れて、というお話。
小生意気で元気いっぱいなアサヒと、天然な母セイとのやりとりがとてもに微笑ましくて、さらには過去を抱えるセイが築き上げた家庭を見守るような周辺の人たちの雰囲気がとてもいいだけに、ヒムロという存在が引き起こすであろう結果が予測できてやるせない。
アサヒやセイと絡むことで、少しずつヒムロも変わっていって、というよりは、セイの天然さに巻き込まれて、あれよこれよというまに、判を押すような関係になってしまったところには、ニヤニヤさせられるんですが……動き出した事態は止まらず。
崩壊していく町に、そして最後の歌に、悲しみがあふれて止まらないですが、何より辛かったのは、アサヒが失ったものの大きさに気づいていくことでしょう。たすけてと叫んだ彼女の言葉とイラストに、涙を誘われましたが、母の愛情あふれる歌を聴いて、強くたくましく生きていくことを誓う少女の思いに、家族の思いに、スッと芯が強くなる思いを感じました。
いやあ、良かったなあ。物語だけじゃなくて、イラストも良くて、なんと、竹岡葉月さんの姉、竹岡美穂さんが描いてるじゃないですか。姉妹合作は初めて手にしたかもしれませんが、絵も物語も好きな作品って、そうそうないから嬉しいです。ああ、満足した。
ウォーターソング (コバルト文庫)
竹岡 葉月
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