「ロードとカウボーイは大丈夫かな。オレ様は失敗して、帰ってきた途端に殴り合いの喧嘩をおっぱじめるほうに十ポンドかけるね」
「じゃあおれは、二人の間に愛が芽生えるほうに十ポンドだな」
「ああ、ともに危険を乗り越えればそういうこともあるかもね」
「……冗談なんだが」
「もう遅いよーん」
すねかじりのドラ息子で、飛行機の腕前だけには自信を持つアメリカ人のリックが、元婚約者の挑発を受けて、イギリス空軍の傭兵部隊に飛び込んで……。戦争の現実を目の当たりにしながら、生き抜いていくイカれた男たちの空の戦いを描くアクション・コメディです。
これは楽しかった。
無駄に自信満々なリックの姿には、お約束なモノを感じて、実際そういう展開になるんだけども、強がる姿がかわいいせいか、憎めないんだなあ。クールで高飛車な凄腕のエースのイギリス貴族・ロードに、ぎゃふんと言わされながらも、何かと突っかかっていきながら、自分の力を認めさせようとする姿がいいです。
仲間としては、圧倒的被弾率を誇りながら生還を繰り返す陽気なロシア人・ピロシキ、何かと告解を迫る「司祭」こときまじめなイタリア人・パードレという個性豊かな面子がおりましたが、どこか他人事のような目線であったのは、やはり戦争という「殺し合い」にすれてきたところがあったからなんだろうなあ。
空を飛びたい。ただそれだけのために得る代償は、心に大きな傷を与えるものだったと思います。
でも、リックという飛行機おバカがやってきたおかげで、自分たちの思いを取り戻すところは良かった。着任したばかりなのに、あっという間にムードメーカーになれるんだから、いい感じのバカです、ええ。
個人的に好きなシーンは、リックが敵にたいして勝手に一騎打ちを持ちかけるところです。知らせを知ったときのロードの「あのバカども……」という言葉に込められた気持ちにニヤニヤしちゃう。
その後の空戦シーンも良かった。戦争という戦いの中で、それでも敵に、空に、戦闘機に、尊敬の念を忘れない男たちの姿は、心に残るものがありました。
空を飛ぶときの真剣な姿と、地上に降りたときの力が抜けた会話によるバカっぷりがたまらんですね。もう一冊お話が続いてるようなので、とても楽しみです。今度はレッドバロンとの戦いが見れるのかしら?
天翔けるバカ flying fools コバルト文庫
須賀 しのぶ
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Comment:1
- ジャラル 2008-10-08 (水) 11:34
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須賀しのぶ先生の初期作品の一つですね。この作品に書かれているように、当時のアメリカ人は乱暴者・お調子者としか思われていないのが(いや今でもそうか)事実です。
レットバロンもそうですが、やはり敵役として異彩を放つのは、ヘルマン・ゲーリング、後のドイツ第三帝国における空軍総司令官で。ナチ党政権下のドイツにおけるヒトラーに次ぐ実力者になる彼の若き日の姿ですね。当時は、実際に皇帝から勲章を貰った撃墜王だったのですが、やはりチラチラと危険な雰囲気が感じられます。しかし彼もヒコーキ野郎でして次巻では・・・未読の方のために内緒(笑)。
次巻にはこの巻では名前だけの登場のロードの妹さんも登場しますから楽しみにしてください。







