Home > ライトノベル > [須賀しのぶ] キルゾーン 来たれ、壊滅の夜よ

[須賀しのぶ] キルゾーン 来たれ、壊滅の夜よ

「なぜよりにもよって、士官大学なんだ?」
「なんかまずいですかね?」
「……まずいも何も、君が軍幹部になったりしたら、私は亡命する」
「え、ひどいな。だってホラ、俺って結構銃器類とか興味あるし、べつに将来なりたいものとかないし、タダでメシの保障もしてもらっちゃって、堂々とそういうの使える立場っていいかな、なんて」

エイゼンの過去が語られる番外編。キャッスルの兄サウルやメイエなどと過ごした士官学校時代の出来事が描かれているんですが……、エイゼン、なんて理由で士官学校を目指してるんですか、あんたは!進路相談を受けた先生にご愁傷様と声をかけたくなりますが、根拠レスな自信は、既にこのころには出来上がっていたのね。

それにしても、独特の雰囲気がありますよねぇ。入学式の最中に寝るような人なのに、どこか一目置かれるもの分かる気がします。サウルが何かとエイゼンを気にかけるようになったのも、この雰囲気に惹かれたからなんだろうなあ。
他人の視線をまったく気にかけなかったエイゼンが、サウルだけは認めていくあたりのやり取りが、すっごい好きでした。

あと、メイエと仲良くなっていく過程も、エイゼンらしいですよねぇ。嫌われてることをものともせず、ちょっとずつ、ちょっとずつ懐柔していく手腕がさすがというかなんというか(笑)。
お堅いメイエが、初めてエイゼンに見せたときの笑顔とか、ほんと素敵でしたよねぇ。あれは、エイゼンでなくても惚れると思いました。

が、それほどの相手であっても、あっさりと諦めきれるのがエイゼンで。
このあたりの執着心のなさとかは、時々ゾッとするものがあったんですけど、このあたりは、彼の家庭の問題もあったんですね。いや、家庭にその責任を押し付けるのもどうかと思うけど、休暇中に姉の家にもぐりこんだときの出来事は、やはり彼の性格の破綻の一部を表しているように思えました。

それだけに、例の事件がおき始めたときは、不安でいっぱいになったんですが……やはりそうなったのか。もし。なんて言葉は、軽々しく使いたくないけれど、それでも、もしサウルが例のところに所属していなかったら。あるいは、サウルが学生総長でなかったらと、考えてしまいます。

もはや人の力ではどうすることもできない、大きな流れに身を任せることになり、破滅への道を突き進んでいったサウルやエイゼンたちでしたが、あの時、裏切りものの名を課せられることになったエイゼンがいたからこそ、サウルは、最後を迎えることができたんだと、そう思いました。

あー、もう切ないなあ。いつか、エイゼンは、姉の予言とも言うべき言葉を振り払うことができるんでしょうか。それとも、その行動を続けていって、自らを滅ぼしてしまうんでしょうか。シリーズが終わるまで、彼の行動には目を離せません。

人は、変わることなどできないのよ。
だからあんたは、最後になにもかも壊したくなるのよ。

来たれ、壊滅の夜よ―キル・ゾーン - 須賀 しのぶ

来たれ、壊滅の夜よ―キル・ゾーン
須賀 しのぶ

集英社(文庫)
Amazon | bk1


関連エントリー
[須賀しのぶ] [キル・ゾーン感想一覧] [コバルト文庫] [ライトノベル]

Home > ライトノベル > [須賀しのぶ] キルゾーン 来たれ、壊滅の夜よ

Trackback:0

TrackBack URL for this entry
http://www.booklines.net/mt/mt-tb-t.cgi/2403
Listed below are links to weblogs that reference
[須賀しのぶ] キルゾーン 来たれ、壊滅の夜よ from booklines.net

Comment:0

Comment Form
Remember personal info

Home > ライトノベル > [須賀しのぶ] キルゾーン 来たれ、壊滅の夜よ

Search
お気に入り

異形の王子と毒を吐く少女の恋の物語

4048700588

他人を寄せつけぬ毒を載せた言葉を吐いていた少女が、王子と伝承と出会ったことで、信じる思いを紡ぐようになる、その祈るような思いに涙しました。懐かしき人たちとの再会もまた素敵。→感想


それは血の繋がらない家族の物語。

4048700480

大きな山や谷があるようなお話しではないんだけれど、クセのある七人のきょうだいが共に暮らすその家には、じんわり温かい家庭がありました。それぞれ抱えているものはあるけれど、この家族ならきっと支え合いながら乗り越えてくれると信じてる→感想


それは「夢利き」が語る人の夢の物語。

夢の上(1) 翠輝晶・蒼輝晶 多崎礼

最高傑作級!辛くとも好きな人と共に歩める幸せ、あるいは人の夢に乗る幸せと切なさ。独立しながら、リンクする物語は、温かさに、人を想う気持ちに満ちあふれて、胸が熱くなる。人が人と出会うことの素晴らしさは、時に眩しくもあり、切なくもなるんだなと思いました。→感想


江戸時代。新たな暦を作る偉業を成し遂げた渋川春海の物語。

天地明察

最高傑作!碁打ちであり、算術家でもある男が、打ちのめされ挫折して挫折して挫折して、でも夢を忘れられず、立ち向かう姿に、どれほど興奮させられたか、泣かされたことか!さりげなく描かれる恋も素晴らしく、読み終わりたくないとこれほど思った作品はありません。 → 感想


左遷された北嶺で隠居生活を堪能しようとした史官ヤエトの前に、皇女が太守としてやってくるお話。

翼の帰る処 上 (1) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-1)翼の帰る処 下 (3) (幻狼FANTASIA NOVELS S 1-2)

中間管理職的苦労に悩まされるヤエトの姿がとても楽しいですが、それだけじゃなく、北嶺と帝国の歴史的秘密が見えてくる展開に興味を惹かれること請け合い!超オススメです!→上巻感想 / 下巻感想


普通の社会人であるこかげが、異世界の騒動に巻き込まれるお話。

wonder wonderful 上wonder wonderful 下

やさしさで涙する物語でした。あ、もう最高!王宮話やら恋愛要素やらも非常に楽しく、読み進めるにつれてゴロゴロ転がりまわりたくなること必至です!今年一番のオススメ!→感想 上/ 感想 下

なかのひと

Page Top