「なぜよりにもよって、士官大学なんだ?」
「なんかまずいですかね?」
「……まずいも何も、君が軍幹部になったりしたら、私は亡命する」
「え、ひどいな。だってホラ、俺って結構銃器類とか興味あるし、べつに将来なりたいものとかないし、タダでメシの保障もしてもらっちゃって、堂々とそういうの使える立場っていいかな、なんて」
エイゼンの過去が語られる番外編。キャッスルの兄サウルやメイエなどと過ごした士官学校時代の出来事が描かれているんですが……、エイゼン、なんて理由で士官学校を目指してるんですか、あんたは!進路相談を受けた先生にご愁傷様と声をかけたくなりますが、根拠レスな自信は、既にこのころには出来上がっていたのね。
それにしても、独特の雰囲気がありますよねぇ。入学式の最中に寝るような人なのに、どこか一目置かれるもの分かる気がします。サウルが何かとエイゼンを気にかけるようになったのも、この雰囲気に惹かれたからなんだろうなあ。
他人の視線をまったく気にかけなかったエイゼンが、サウルだけは認めていくあたりのやり取りが、すっごい好きでした。
あと、メイエと仲良くなっていく過程も、エイゼンらしいですよねぇ。嫌われてることをものともせず、ちょっとずつ、ちょっとずつ懐柔していく手腕がさすがというかなんというか(笑)。
お堅いメイエが、初めてエイゼンに見せたときの笑顔とか、ほんと素敵でしたよねぇ。あれは、エイゼンでなくても惚れると思いました。
が、それほどの相手であっても、あっさりと諦めきれるのがエイゼンで。
このあたりの執着心のなさとかは、時々ゾッとするものがあったんですけど、このあたりは、彼の家庭の問題もあったんですね。いや、家庭にその責任を押し付けるのもどうかと思うけど、休暇中に姉の家にもぐりこんだときの出来事は、やはり彼の性格の破綻の一部を表しているように思えました。
それだけに、例の事件がおき始めたときは、不安でいっぱいになったんですが……やはりそうなったのか。もし。なんて言葉は、軽々しく使いたくないけれど、それでも、もしサウルが例のところに所属していなかったら。あるいは、サウルが学生総長でなかったらと、考えてしまいます。
もはや人の力ではどうすることもできない、大きな流れに身を任せることになり、破滅への道を突き進んでいったサウルやエイゼンたちでしたが、あの時、裏切りものの名を課せられることになったエイゼンがいたからこそ、サウルは、最後を迎えることができたんだと、そう思いました。
あー、もう切ないなあ。いつか、エイゼンは、姉の予言とも言うべき言葉を振り払うことができるんでしょうか。それとも、その行動を続けていって、自らを滅ぼしてしまうんでしょうか。シリーズが終わるまで、彼の行動には目を離せません。
人は、変わることなどできないのよ。
だからあんたは、最後になにもかも壊したくなるのよ。
来たれ、壊滅の夜よ―キル・ゾーン
須賀 しのぶ
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