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[浩祥まきこ] やさしい雨

本当はそんな風に同情されることが一番嫌だった。真実を知らないくせに知ったかぶりをして人のなかに入り込んでくる奴が一番面倒だった。他人の気持ちなんか絶対にわからないのだし、それなら半端にわかろうとするよりもわからないと宣言するほうがよっぽどマシだ。今でもそう思っている。
なのに。
どうして私の胸はこんなに痛むんだろう。

ある学校を舞台に して

  • 孤立した転校生・月島律がとある出来事からクラスメイトの女の子・片瀬歩に心を開いていく「やさしい雨
  • 雨にトラウマを持つ片瀬歩が、雨の日に片思いの相手と出会い、光を見出していく「水の中の月
  • いじめから登校拒否となった石岡ゆきが、天使と片瀬と月島と出会い、生きる力を取り戻す「ささやかな奇跡

という三篇が収録されている作品なんですが、ああ、素敵だなあ。繊細な少女の思いには、時に切ない気持ちになるんだけど、人の優しさを感じて、自分を見つめなおして、最後には前を向いてくれる展開がとても良かったです。

どのお話も良かったけど、一番良かったのは、やっぱり表題作「やさしい雨」かな。
無愛想であるが故に、転校直後から、周囲との間に壁ができてしまう月島律。唯一話しかけてくる片瀬歩がいるものの、孤独を貫く姿は、どこか無理してるものを感じていたんですが、ちょい悪な松崎と出会ったことで、過去の傷が見えてくると、なるほどと思えてくる。無理をしているというよりは、悲しさに捕らわれていたんだなあ。

それを平気だと思い込んでいく姿には、どこか痛々しいものがありましたが、美術の時間に片瀬歩の描いた絵を見て心揺さぶられて。悲しくとも涙を流せなかった律が、少しずつ変わっていったのは、歩という存在とその感動があったからだと思います。

二度と出来ないと思っていたことに再び触れることが出来て、泣くことを思い出して、他人のぬくもりを思い出して、笑えるようになったところは、ほんと素敵でした。

収録されている三篇は、主人公こそ異なれど、同じ学校を舞台にしているし、登場人物もかなり被ってて、この後の話で、律と歩が親友のように一緒に行動しているシーンが幾度と無く見れたときには、思わずニッコリさせられます。,/p>

誰だって弱いところを持っていると思うけど、その弱さがちょっと前に出てしまった少女たちが、人との触れ合いから、立ち直っていく姿に、優しさが伝わってきました。
いやあ、ほんと素晴らしいお話でしたね。これはすっごいオススメしたい作品のひとつになりました。

やさしい雨 (コバルト文庫) - 浩祥 まきこ

やさしい雨 (コバルト文庫)
浩祥 まきこ

集英社(文庫)
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