「……恋ですか?」
「さよう。一目惚れ、っちゅうやtですな。たまにあるんですわ」
「本のなかの人に?」
「本のなかの人にも、です」
知らない人と話すのが苦手で、よく知ってる親と話すのはもっと苦手。そんな女子大生が、図書館で思わず声をかけてしまったごむにんげんとの交流を描いた表題作「ごむにんげん」と、小説に登場する男の人に本気で恋をした少女が、本の世界に手紙を出せるという話を聞いて行動に移す「妖怪ポスト」の二編が収録されています。
ああ、素晴らしい。
「ごむにんげん」では、親との確執に苦しさを覚えながら、それでも親元を離れられない女性の不器用な姿が見えてくるところがとても切ないんですが、マイペースなごむにんげんが側にいることで、ちょっとずつちょっとずつ安らぎを覚えて、家族の絆を取り戻していく展開がとてもいいです。
過ちを犯すことがあっても、取り戻せないわけじゃない。もちろん、昔と全く同じというわけにはいかないかもしれないけれど、読み終わったあと、駆け出したくなるような嬉しさがこみ上げてくるものがありました。うん、素晴らしい。
一方の「妖怪ポスト」は、切なさよりも楽しさがはちきれんばかりでした。本の登場人物への恋する乙女・空子の物語。ここまで本気だと応援したくなりますね。楽しさ満載です。 しかも本の世界に手紙を届けてくれる特殊郵便配達員なる人が出てきて、さらには本屋のおじさんが、本屋としての仕事をしてくれるから粋じゃないですか!
「本屋の仕事といえば、みなさんと本との世界をつなぐ、ということではないですかな?」
たしかにそうだけど、だからといって本の世界に連れて行ってくれるのはどうなんだろうと思いつつ、グッジョブ!と言ってしまった僕がいる。
憧れの人は、想像どうりで、想像以外のこともあって、ただただ告白することだけしか考えていなかった空子が、好きな人の押し殺すような心を見て、相手のことも考えるようになり、でも最後まで前を向き続ける姿が良かったです。こういう強さは見習いたいものですね。
いやあ、楽しかった。
ごむにんげん (コバルト文庫)
浩祥 まきこ
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