もう、戻れはしない。
これが、自分の運命なのだろうか。すべてを覆された最終結果なのだろうか。
あの短刀は自分の人生を、たしかに買えた。
……わがままなのか、これは?こう思うのは、わがままなのだろうか。
「こんなこと……私は望んでいなかった!」
男でありながら父の命によって姫として育てられた帰蝶は、うつけと名高い織田信長のもとに輿入れすることになった。うつけであれば暗殺を、その決意を胸に秘めて初夜を迎えた矢先に、驚くべき事実を知って……コバルト読者大賞を受賞した「帰る日まで」とその続編「彷徨夜」「夜見る焔」の三編が収録されている作品です。
これはとてもよかった。切なさが胸にくるお話ですね。
濃姫こと帰蝶が男だったことが明かされて、輿入れ先の信長が実は女で……というところから始まる恋は、えー!と驚かされましたけど、仲睦まじい様子に、ホッとするものがあって。
基本的に歴史をふまえての話なので、信長の行く末がどうなるかはわかっているんですが、それでも、このまま共に時を……と願わずにいられないものがありました。
信長と蝮と呼ばれた斉藤道三が顔を合わせたときの驚きは、そのまま読者である僕の驚きでもありましたが、明かされる真実は、ほんとやるせなくて……。
望んでいなかった、と叫ぶ言葉が、胸に響いて、ぐっとなる。
「彷徨夜」では信長と弟・信行、「夜見る焔」は妹のお市とのお話が描かれるんですが、これまたひどく胸が苦しくなるお話なんです。
信行の思いには、まさか!と思わせるものがあるんですが、彼に信用されないことがとても辛く、胸に痛く、お市の方とは……なまじ信長に似てるからこその募る思いがやりきれない。
信長がなぜあそこまで執拗に戦いを求めたのか。その心情が見え隠れして辛かった。
どのような最期を遂げるかはもちろんわかっていたんですが、それでも、タイトルを思わせるつぶやきに、目を閉じてしまうものがありました。
こういう切ないお話、好きだ。
帰る日まで (コバルト文庫)
藤原 眞莉
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