月や火星へと移住した裕福なものたちは、地球を顧みて驚いた。いつの間にか地球はスラム街と化していたのだ。そこで、地球外の人々が「地球統一政府」をもって統治しようとしたが、地球に住むものから猛反発を喰らった。政府VSレジスタンスの構図は、人的資源が足りない政府に不利となっている。ならば、現地で人を調達すればよいと、政府は高い俸給をエサに、地球でレジスタンスと戦う「治安部隊」を募集し始めた。
そんな治安部隊の一曹長で、女だてらに仲間もしくは上官として圧倒的な支持を受けるキャッスルは、敵に捕らわれた仲間の救出作戦を指揮することになったが、保身を考える上司は手を貸さず、むしろ新人の問題児を助っ人として押し付けてきて……
流血女神伝シリーズの須賀しのぶさんの作品ってことで、手にとってみました。地球外に住む裕福な人々の手足となり、レジスタンスと戦う治安部隊のとある一部隊を描いたお話なんですが、これは面白いですねぇ。ページをめくったら、あっという間に読まされてしまいました。まさに一気読み。
なんといっても、部隊長たるキャッスルがいいですね。なめた口を利く新人たちは、長年鍛え上げた体で、あっという間に組み伏せる気が強さを見せるけど、仲間のためなら無謀ともいえる作戦も躊躇しない情の厚さを見せてくれるところが素敵です。なるほど、仲間たちから、一目置かれる存在であるのもわかる。
また、この部隊にいる人たちが、一癖も二癖もある人ばかりで楽しいんだ。特に副隊長のエイゼンの曲者ぶりといったら!救出作戦に必要なヘリを調達できるかもと言い出したときには、まさかこんな(ある意味)ベタなことをやってくれるとは思いませんでした。軽薄そのもののように見えるけど、味方にしたらこれほど心強い人もいないんじゃないかしら。
この二人の関係は、戦友という言葉では表せないものを感じますが、負い目があるために負担をかけたくないと思うキャッスルと、彼女の後悔に気づきながらそっと支えるエイゼンとのくされ縁以上の信頼関係が、とても素敵でした。
そんな二人のフォローに回るアヴドゥルの三人+過剰防衛の殺人、脱走未遂、婦女暴行未遂を起こした問題児の新人三人で、戦場を駆け抜けるんですが、いわゆる平時とは違う戦場独特の空気を感じられましたね。人を殺す行為に慣れるとは、どれほど自分の心を殺すことになるのか、想像するに重いものがあります。
それをせねば生きられないというは、酷なことではありますが、仲間が心を強くしてくれる存在となってくれたらと、願わずにいられません。
いやあ、面白かった。最後がまたいいですね。どうなったのかというところは見えないんですが、希望を求めて飛び立つ最後のシーンが、とても心に残ります。これならきっと、と思わせてくれます。
新人隊員たちも、まだまだ素直にはなりきれないかもしれないけれど、いい感じに仲間になっていきそうなので、今後どういう成長をしていくのか楽しみです。
キル・ゾーン―ジャングル戦線 異常あり
須賀 しのぶ
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