「わたしが、彼をつらい目にあわせてしまっているのかしら」
結局、エリカとの約束がジェラルドを縛っているのではないだろうか。
約束さえなければ、彼は両親のもとへ帰ってきていたはずだった。
「それは違うよ。エリカ、きみはジェラルドの希望なんだ」
イギリスの上流階級の父と日本人の母を持つお転婆な少女エリカが、両親の死をきっかけに祖母の待つイギリスへ渡り、上流階級が何たるかを学ぶべく、レディズ・カレッジにの寮で生活をするお話の第四弾。お互いの気持ちを確かめ合ってから二年あまり。イギリスとアメリカという距離を手紙で埋めていたある日、エリカの前に、投資家の青年が近づいてきて……というお話です。
ああ、もう、なんてもどかしい……だが、ここは一言しかない。ジェラルドのバカ! 距離ができても約束を胸に、努力して行くエリカの姿は、とても好ましくて、とても素敵で。もちろん、周囲の視線は厳しいんだけれど、祖母の配慮と、持ち前の行動力で、ちょっとずつちょっとずつ、自分の出来ることをやっていく姿を見ていると、いつかはきっと……と思えるものがありました。
特に、これまではカレッジ内を中心としたお話だったけれど、卒業が間近となってからは、オールソップ家の名誉なるものを感じていき、その重さを実感しながらも、夢に向かって進んでいってましたからね。
ところが、ジェラルドのほうは……。いや、わかります。僕だって男ですから、釣り合いたいと思って、そこに至らないとなれば、合わす顔がないというのは。でも、せめて、何らかの連絡ぐらいはいれたっていいだろうに……。待っていてくれると思うのは、信頼でもあるけれど、甘えでもあると思いました。
不器用だってことはわかっていても、不安は募るばかりで。
ましてや、オールソップ家は決して裕福ではないから、貴族の娘としてどうあるべきかを考えたら……ね。はねつけるならば、支えがないと揺れてしまいますよ。
周囲の視線を感じながら、思って待ち続けていたのに、あのタイミングは……正直きつかったなあ。夢に向かう仲間の頑張りを見て、自分もと思った矢先だっただけに、エリカのショックは大きかったと思います。
それでも、お互い一言でも伝えることができれば、こんなに辛くならなかったろうに……。
言いたいことがあるのにそれを押し殺して、お互いを傷つけ合ってしまっているふたりですが、さて、ここからどうなるんでしょうか。泣いても笑ってもあと一冊。素敵なハッピーエンドが待っていてくれますように!
花咲く丘の小さな貴婦人荒野へ、心に花束を抱いて 前編 (1) (コバルト文庫 た 16-43)
谷 瑞恵
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