どうしてイヴリンはユベールでなくてはならないのだろう。
まるで緩慢な自殺のようだ。恋に溺れて、自分からすすんで堕ちていっているようだ。
シャーロックはふいにぎくりとし、違う―と、自分の気持を打ち消す。闇のドレスや恋のドレスなど関係ない。
人を好きになるのに、条件など関係ないということは自分がいちばんよく知っている。
仕立人クリスと公爵家の御曹司シャーロックの身分違いの恋を描いたお話の第十七弾。今回は、穏やかに暮らしていたクリスの前にユベールが現れ、一方闇のドレスを追うケネスとシャーロックはクリスの過去に迫り……というお話。
あああああ!なんてこと……!ほんの少しのボタンの掛け違いが、決定的な溝を作ってしまうなんて……
ユベールがクリスやリンダ、イヴリンと出会った過去の日々が描かれているところでは、身分の差に、いまのシャーロックとクリスを重ねてしまうものがあり、おそらくシャーロックもクリスも同じように思っていたと思うんだけど、そこから導く結論が別になってしまうのは、やはり身分の差を感じているからかしら。
ふたりっきりになったとき、相手への愛しさを存分に見せてくれて、ただ側にいるだけで幸せだという気持ちが伝わってくるだけに、この溝が辛かったです。ほんの少しだけタイミングがずれていれば、こんなことにはならなかったと思えるだけに、余計そう思うのでしょう。
こうなると、弱さに漬け込まれないか心配だなあ。クリスはまだパメラがいるからいいけど、シャーロックはなまじプライドが高いから……ドキドキしてきた。
恋のドレスと追憶の糸―ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (コバルト文庫)
青木 祐子
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