「こんにちは、アイヴォリー。また会うなんて、思わなかったわ」
アイヴォリーは、ほほえんだ。
春風のようなほほえみ。美しい笑み、魅力的な男。それだけは認めなければならないだろう。たとえ今が、春でなかったとしても。
アイヴォリー……十四歳のパメラを買おうとした誠実な紳士は、まぎれもない、パメラの初恋の男だったのである。
仕立人クリスと公爵家の御曹司シャーロックの身分違いの恋を描いたお話の第十六弾。今回は、パメラの過去を知る男が接触してくる中編「聖者は薔薇にささやいて」と、ミニまんが、薔薇色のとある暇な午後を描く「午後のクッションと小さな賭け」、シャーロックの学生時代の恋を描く「卒業前夜」の二編の短編が収録されています。
「聖者は薔薇にささやいて」はパメラが主人公となるお話。
もしかして惹かれてるのでは……なんて不安がちらりと浮かんでしまいましたが、さすがパメラ、三年間でとても成長していたんですね。あしらいっぷりが見事でした。
避けられているのをものともせず、周囲から崩していこうとするアイヴォリーの嫌らしさは、ほんと困るものでしたが、パメラの過去を知ったことで、驚くこともあったろうけれど、それを含めて受け止めた男たちが男たちが素晴らしかった。
いつか、アントニーとイアンのどちらかを選ぶことになるのかもしれませんが、どちらが選ばれても相手を祝福できる三角関係が、温かく思いました。
パメラ話を読んだ後に、ミニまんがを読むと笑いが止まらなくなりますが、その後の短編もまた印象的でした。「卒業前夜」のシャーロックの恋は……恋と言うにはあまりにも冷めたものでしたが、「氷の男」なんてことやってるから、いまクリスを前にすると、どうしていいかわからなくなってしまうんだろうなあ。
いまの夢中っぷりを知ってると、逆に面白く感じてしまうお話でした。いや、お相手さんは可哀想だと思うんですけどね……
聖者は薔薇にささやいて―ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (コバルト文庫)
青木 祐子
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