「わたしはそなたが気に入ったのだ。なるほど、確かにそなたは頭が固い。強情でなかなか意志を曲げぬ。しかし少なくとも、平凡ではない」
そして王子は、ニヤッと笑った。
「なにより、わたしはそなたといて退屈したことなど一度もないぞ」
魔術師として有名すぎて人々に恐れられていた元王子さまのドナティアンは、ある日、自分の研究の成果を受け継がせるために跡継ぎをつくろうと思い立って、魔法の水盤が示した女の子をさらってきたが……世間知らずの傲慢な魔法使いが、しっかりものの女の子と出会ったことで、人を想うことを知っていくお話です。
これは面白かった!
さらったことの何が悪いと言わんばかりのドナティアンと、彼に説教しながら、何とか逃げ出そうとするアドリエンヌのやり取りが、とてもコミカルで楽しい。
結婚は愛するものたちがするものというお話に、では愛とは何か?と尋ねられて、挑発に乗ってしまうシーンとか、ほんと可愛いよね、アドリエンヌは。
逃げだそうとお城を探索してるときに、ちょっとしたトラブルを引き起こしてしまい、そのときのふれあいから、何となく気になる関係になり……という展開がとても良かった。良かったけど、もうちょっと惹かれあうところをじっくり書いてほしかったなあ。いい雰囲気だっただけに、ちと物足りないところもありました。
くっつくまでのお話が「魔王子さまの嫁取り話」で、もう一編、アドリエンヌの両親に会いに行く「魔王子さまと里帰りの顛末」が収録されてるんですが、これまた楽しかった。
何はともあれ一度は両親に挨拶してこないとというアドリエンヌを帰したくないからと引き留めるドナティアンにニヤニヤが止まりません。なんだよ、このさびしんぼうめ。
一歩外へ出れば、とっても傲慢なんだけど、悪気はなく、むしろアドリエンヌのために、というのが伝わってくるだけに、アドリエンヌの家族とのやり取りが、ズレながらも頬が緩んで仕方なかった。贈り物のために、子供たちとの共犯関係を作るところ、いいよねー。
ちょっとした誤解から、村の人たちとの間で騒動が起こり、そこでアドリエンヌが気落ちしていくのは、やっぱり自信がないからなんですよね。人の思いはわからない以上、仕方ないけど……
よく考えれば、遠慮を知らない魔王子が一緒にいようと思ってくれてるんだから、もっと自信もっていいよね。他人の思いも気になるけど、まず自分の思いがどこにあるかを気づかせてくれた水晶の精がぐっじょぶでした。
いやあ、面白かった。世間知らずの魔王子が、アドリエンヌの妹にからかわれながら贈ったプレゼントが、とっても素敵でしたね。これ続き読みたいなー。
家族が遊びに来ても楽しそうだし、ふたりに子供ができたら、ドナティアンがどう変わっていくのかにも興味があります。
ブランデージの魔法の城―魔王子さまの嫁取りの話 (コバルト文庫)
橘香 いくの
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