「蛍の宮さまはお気に召されぬようでしたけれど、女御さまは、まあ、ご性格はともかく、お頭のほうは申し分なく賢いかたでいらっしゃるのですわ。その賢い女御さまが起こされた狂言ですもの、裏には何やら深い事情が隠されているのでしょう。
ふふ……面白いですわね、後宮というのは、まこと退屈知らずの場所でございますこと!」
名門貴族・九条家のご落胤である馨子は、美しく聡明で破天荒。何かしら彼女に振り回されるお人好しな乳姉妹・宮子が、馨子の身代わりとなって九条家の姫様となったシリーズの第三弾。今回は、東宮のお妃候補の鳩子と、遊び心満載の対決をすることになり、宮子があわてふためく中、内裏で不審火が続き……というお話。
ああ、笑った。超面白かった。後宮とは、なんと華やかで、にぎやかな場所なんでしょう。
帝の正室である中宮も優しいようで、ちょっぴり意地悪く、次郎の君(東宮)のお妃候補の鳩子は可愛さとは裏腹の腹黒さと女の子大好きっぷりで(半裸の美女で反応するってどうよ!)、振り回される宮子の様子がおかしくておかしくて。
中でも一番面白かったのは、鳩子の乳姉妹・宣旨の君と、宮子の乳姉妹・薫子の笑顔のやりとりでしょう。周囲の空気が凍えるような嫌みをやりとりで張り合うふたりの間には、絶対はいりたくないと思いました。
そんなにぎやかしのメンバーが、宮中を二分するゲームをすることになるって言うんだから、勝負が始まる前からワクワクしっぱなしでしたよ。ましてや次郎の君を賭けてとなったら、ね。
っていうか、次郎の君が宮子にアプローチしてくるシーンはほんと素敵で、すっかり真幸のことを忘れてた僕は、このままくっついちゃえばいいのにと思ってました。
宮子の次郎の君への思いは好意だとは思うけど……、どうなんでしょうね。真幸とは違った形の思いが見えて、気になるばかり。
にぎやかで、ロマンスありで、これにミステリ要素があったらベタ惚れするしかないです。今回の話では一大イベントの間にも、ちょっとした謎解きがありましたが、一番の謎解きは不審火のお話でした。
後宮内で不審火が連続し、宮子も目撃したものの、そこは密室で……というところから見えてきた火の正体は、とても切ない。
ここで生まれた歪みは、時代の陰とも言うべきかもしれないけど、そんな現実を目の当たりにしてショックを受けながらも、前を向く宮子の姿が良かったです。
にしても、ラストがまた強烈な引きだなあ。いったい「彼女」の身に何があったのか、気になるばかり。
嘘つきは姫君のはじまり恋する後宮―平安ロマンティック・ミステリー (コバルト文庫 ま 10-4)
松田 志乃ぶ
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