「わたしのしあわせ?」
ジャレッドは茶目っ気たっぷりの笑顔になった。
「そうですよ、クリス。あててみましょうか。あなたのしあわせはね、シャーロックがしあわせになることでしょう。違いますか?」
仕立人クリスと公爵家の御曹司シャーロックの身分違いの恋を描いたお話の第十二弾(短編入れると十四弾)。今回は、もう一度シャーロックを振り向かせようとする伯爵令嬢のアディルが、オルソープ伯爵家の舞踏会で新たにドレスをリンダに依頼し、その舞踏会に「薔薇色」のクリストパメラが舞踏会に招待されて……というお話。
シャーロックの余裕のなさが何とも言えない乙女心をかもし出してますね。仕事だとわかっていながらも、男と一緒にいるクリスに対して、独占欲を見せるところに彼の思いを感じますが、クリスからしたら、シャーロックしか見てないから、なぜそこまで?みたいなものがあり、窮屈だよなあ。そこで相手の余裕のなさをわかってあげられるほど、クリスも経験豊富じゃないので、ちょっとハラハラしながら読んでました。
それにしても、今回のアディルは可哀想だったなあ。シャーロックを振り向かせるために、表には出さないけれど、心の奥底では燃え上がるものがあって。神頼みじゃないですけど、危険だと思いながらも、リンダのドレスに拘りを持ってしまうところに、彼女の思いを感じます。
でもね、舞踏会でシャーロックと踊ったとき、彼女が温かさを感じた彼の手を包む手袋は、クリスが作ったもので……。事情を知っていると、温かさが余計に切なかったです。。
シャーロックの想いが仕立人にあると知りながら、それでも一抹の想いを胸に動き、改めて恋に破れたことを知って。それでも、気丈な姿を見せたアディルの誇り高い姿は非常に印象的でした。あそこで、シャーロックの妹と語ることができないことは、果たしてアディルにとって良かったことなのかどうか……。難しいものですね。
と、なんかアディル話ばかり書いてしまいましたが、シャーロックだっていいところはありましたよ。始めて舞踏会に参加したパメラをリードする姿は、何この恰好よさ!と惚れそうになりました。ヘタれなのはクリスのことだけなのかと思った次第。
クリスにちょっかいを出し始めてるジャレドの言葉どおり、シャーロックの立場からでは、せいいっぱいがどのくらいかってのが見えてきて、何ともやるせないものがありましたけど、それでも最後に舞踏会を抜け出したふたりが、月夜の中、ダンスをしたとき、今までちょっとチグハグになっていたふたりの距離が一気に縮まってきたのを感じられて、すごい良かったです。
好きという想いを抱きながら、一歩ひいた感じでシャーロックと対峙していたクリスが、あの口づけで目覚めちゃったかもなあ。ああ、この二人の思いは、いったいどうなっていくんだろう。続きがとても楽しみです。
恋のドレスと舞踏会の青―ヴィクトリアン・ローズ・テーラー (コバルト文庫 あ 16-23)
青木 祐子
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