「自分が何で買われたか、知りたくないのか?」
それは……知りたい。
「幻獣だよ」
ヴァルはそっけなく言い放つ。
「俺たちは伝説の『十三対の海の幻獣』を探してる。お前はその幻獣を探す道標。つまりはそういう事だ」
t-snowさんの感想を読んで手に取りました。
港湾倉庫の隙間で、弟分たちと寄り沿って生きてきた孤児の少女・ランが、拉致されて奴隷として売られた先は、なんと海賊船で……幻獣を探すために、海姫として航海する少女・ランと秘密を持つ海賊たちの物語です。
楽しかったー!
奴隷として売られたのに、負けるもんかとムキになって突っ張るランが可愛くてしょうがない。海賊たちもはじめはその元気さに辟易して、いろいろ仕事を押し付けてたのに、だんだんと気に入っていくから、見てて楽しいんだ。特に水も滴るいい男の船長・ヴァルトゥスは、言葉のきつさとは裏腹に、ついついほだされて優しい一面を見せてくれちゃうから、いいですよね!他の海賊との戦いのときにいいところ見せようとする船長の子供っぽさに、にやりとしてしまう。
そもそも、この海賊たちがランを買ったのは、奴隷としてではなく、彼女が伝説の幻獣を探す道標である海姫だからということなんですが、そこからだんだんと見えてくるヴァルたちの秘密は、ちょっとやるせないものがあるなあ。相手の気持ちはわかるけれど自分にも譲れない思いがある、というところで揺れるランは、見ていてきついものがありました。島での楽しさがわかる分、ね。
迷いながら、それでも最後まで諦めずに「海姫」として前を向いた彼女が、ついに幻獣と出会ったとき……、心の中まで甘くなるようなラブ展開ににんまりさせられました。いや、幻獣たちのアレはどうかと思いましたけど、あそこで選択肢を示されたとき、もうひとつの選択をふと思いついたら、見事にそれが実行されたので万々歳でした。やっぱハッピーエンドにならないとね!失恋君はかわいそうだけど、君のおかげで平和が守れたということで、よかったとしようじゃないか。
いやあ、楽しかった。最後のくどき文句がまたよかったですね。しかも二連発できてくれるから、まったくもってごちそうさまです。このあと島やランたちはどうなったのか。できれば、続きが読みたいですね。
海のさいはて、天国の扉―ワケあり海賊と奴隷な幻獣姫の大冒険 (コバルト文庫)
相羽 鈴
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