「君の用件はそれだけかな。ならばこちらの話をさせてもらうが」
「まだあります。でもたぶん、敷島さんが今からお話してくださることが、その答えだと思います」
「ほう。というと?」
「つまり、全て教えてほしいのです。私がここに至るまでのことを」
自分の歌が、感染したものは人を襲うという「天使病」の孵化を促した?嫌われることに臆病になっていた少女・陽菜が、その力を欲する軍によって、平和な日常から殺伐とした世界へと足を踏み入れていくシリーズの第四弾。今回は、「女王蜂」の力を発揮し始める陽菜に、残酷な事実が突きつけられていくお話です。
自らの力を知ってしまってから、すぐ側にある日常を遠ざけようとする陽菜の姿が痛々しく思えてきます。よく考えたらまだ中学生なんだよなあ。割り切れというほうが難しいと思うし、割り切ってしまったら、むしろ人としての心が壊れてしまうような気がするので、心を守るにはこれが限界なのかもしれない。
と、いうギリギリのところにいる陽菜に対して、さらに有紗との決別やアンゲルゼとの戦いにおける真実が見えてくるから残酷です。ひとつ乗り越える度に、新たなる問題を突きつけられて、普通だったら、人間不信どころか、何のために今まで戦ってきたのかわからなくなりますよ。なんせ最上級の愛情を預けてくれるマリアですら、いや最上級だからこそ、陽菜のことしか考えてないんですから、ゾクッとさせられるものがありますよね。笑顔がだんだんと恐ろしく思えるから愛情とは怖いものです。
それでも、決して壊れることがなかったのは、共に戦ってきた人たちと支えあっていたことがわかったからでしょうね。決定的な別れを持ち出してきた当の有紗ですら、冷たい口調の裏側に温かい思いがあって。大切にしまわれていたであろう写真のエピソードには、じわりと涙するものがありました。
有紗だけでなく湊、これまで嫌悪していた敷島など、怖いことから逃げることなく自身も立ち向かっていくところに、彼女の強さを見ました。成長したよなあ。
今回のお話で一番印象に残っているのは、やはり敷島とのやり取りですね。二人の関係が明らかになってから、初めて向かい合って話をして、ちょっと前までだったら冷静に聞くことすらできなかったであろう話を聞き、言葉を交わして、そして……。
ロンの話を聞いてから決意していたであろうことに手をつけてから、敷島と会ったあと、最後に告げた一言に涙させられました。
いやあ、面白かった。ほんと良かった。「こちら」側に心を残す原因となった覚野の話も素敵に青春してて、これからどうなるのかなーといろいろ想像してしまいます。たぶん、本来考えられていたという5冊の形であっても、これから先の話はなかったと思うけど、可能であるならば、続きの話を読んでみたいですね。
須賀さん、すばらしい物語をありがとうございました!
アンゲルゼ永遠の君に誓う (コバルト文庫 す 5-68)
須賀 しのぶ
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