「この先をきく覚悟があるか」
頭蓋をゆさぶるような声でアダジーリョは問うた。
「きかぬほうがよいと、わしは思っておる。それがおぬしのためでもある。黒のハルセイデスよ。きけば、もはや後もどりはできぬぞ」
優秀だけど堅物な軍人ハルセイデスが、ノーテンキなシアシーカ姫を総長をして守りながら、個性的な部下と共に旅をするお話の第五弾。今回は、諸国漫遊の旅から帰途についているときに、総長が姿を消して、というお話。
感想書きながら思い出してみると、いつになくシリアスな展開だったような気がするんですが、読んでる間そう思わなかったのは、一番初めにページをめくったときの一行でやられたからだと思います。
「シーカは美少女だが、心はオヤジであった」
仮にもヒロインなのになんて扱いなんだ!
まあ、言動を見てたら確かにオヤジですけど。
そんなシーカとハルさんを団長とする<黎明の使者団>の様子は、ほんと楽しくて、嫌われてもいいからと何とかシーカに常識を教えようとするハルさんと、すでに手遅れなことを知って見守る団員たちの温かさが伝わってきます。
この「団」としてのまとまりを感じるからこそ、シーカが姿を消したときの様子が心に痛く感じました。特にハルさんは、かつて主君を失ったこともあって、二度も同じ思いを味わうのかと後悔と恐怖にさいなまれるあたり、辛いものがありました。おかげで、シーカの能天気っぷりみてると、おまいは!と思わなくもない。
シーカ失踪の影には、ミトラーダの内部分裂……と言っていいのかな、の影響があったわけですが、そのあたりは(個人的には)どうでもよくて、むしろ一番驚いたのは、シーカの巫女としての秘密ですよ。知ったら引き返せないと言われても、ハルさんはきっと揺るがなかったんじゃないかなあと思います。長い間考えたのは、きっと……ね。
最後に吹っ切れた団長を見れたのが、すごい良かったです。今後はシーカに振り回されるだけじゃなく、シーカの心を振り回してくれるかもしれませんね。いつか二人で……そう思いたいです。続きが楽しみ。
グランドマスター!―姫総長は失業中!? (コバルト文庫)
樹川 さとみ
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