「方法なら、なくもない。ただしこれをやると、あなたとアナベラスを危険にさらすかもしれない」
それでもいいのかというまなざしにイリーシュはためらった。アナベラスを振り返る。
アナベラスは無言で頭を下げた。
「やるわ」
イリーシュは顔を上げた。
「狙った獲物は逃さない。それが<空の旅団>だわ。やってみる」
どんな強固な警備でも潜り抜けてくるという盗賊「空の旅団」は、実は喪われた国の民の末裔だった。というわけで、同じ民の末裔であったことを知ったお転婆王女イリーシュが、旅団の一員となって冒険するお話の第四弾。今回は、世界に散らばる九つの宝のひとつが、エンゴア王国にあるという情報を手にした旅団が、王宮へと潜り込む伝手を求めて、ワ・サナーン海賊団に力を仮にきたところ、囚われた海賊を助けることを条件とされて……というお話。
面白かったなあ。持ちつ持たれつとはいえ、いつ蜜月が終わるかわからない海賊を前にして、怖いと思いながらも、間違ったことだと思ったら、声を上げるイリーシュがいいです。周囲の人に守られているという負い目を持つこともあるんだけど、ちゃんと「思い」を受け止めて、前を向けるんだからいい子です。
今までのお話は、どちらかというと旅団のほうが優位……というか、相手が構えてないところもあって、先手を打つことができてたように思いますが、今回はむしろ相手のほうが先手を打ってて、何かと自由に動けなくなる様子があったところが、印象的でした。ガドフェルーのイヤらしいやり口は、じわりじわりと不安を過ぎらせてくれてドキドキものです。しかも、囚われし海賊を助けるために、狙われてるイリーシュがガドフェルーへの囮になるんだからもう!エイラーンでなくても心配でしょうがなかった。
今回はうまく切り抜けることができましたが、油断はできませんよね。どこかでまた手を伸ばしてくるんじゃないかと思います。こういう宿敵がいると面白くなりそうなので、続きが楽しみですね。
そうそう。旅団のちょっとした日常を描く「消えた眠り猫」という短編も書き下ろされています。とんでもない料理ばかり作るイリーシュが、再び厨房係となって……というところから始まるコミカルなお話。エイラーンの男の子らしい行動にニヤリとしつつ、守り猫であるミシュの姿が見えなくなったのは、というオチにくすり。
今夜きみを奪いに参上!-千人王の恋人 (コバルト文庫 ひ 5-79)
響野 夏菜
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