「ほかの男の人に会うなんて、考えられないわ。婚約者がいるのに」
「だから、つまり、その、婚約そのものをですね……」
キャロラインはくすっと笑った。
「ミルカにはわからないかもしれないわ。愛よりも約束のほうが大切だってことを」
きみの役目は、眠れる館に閉じ込められたお姫さまを救うことだよ ―― 結婚を間近に控えた深窓の令嬢・キャロラインのコンパニオン(話し相手)としてバクスター家に雇われた少女・ミルカは、よそよそしい屋敷の中を探索して……というお話。
かつてキャロラインには思い人がいたのに、家を継ぐことから従兄を婚約者として迎えなければならなくなって塞いでしまう、ということで、婚約者たるロイドがキャロラインに対して監視するような言動をしたり、執事や使用人たちも、気が休まらないようなぴりぴりした雰囲気を放っているんですが、そんな中、明るく行動的に屋敷内を動き回るミルカの姿が清々しい。
かつての思い人たるアルバートとはどうなったのか。結婚が間近に迫っている中、キャロラインはどうしたいのか。
屋敷の中では禁忌となっている問題を追ううちに、婚約者に縛られているのかと思ったら、自分の考えに縛られているキャロラインや、どこか狂気を感じさえるロイド、屋敷に現れるという幽霊などが見えてくるんですが、どうも、こう、見えている出来事と、実際の出来事が微妙にかみ合っていないような、なんとも言えないモヤモヤしたものを抱えながら読んでいたら、
ああ、そういうことだったのか!
と思わず手を打つものが。
よく考えれば気づけただろうに、しっかりだまされてたミステリー展開でした。
面白かったけど、ちょっと物足りないのは、お屋敷の話に終始して、ミルカ側のお話が語られなかったことですね。ミルカの上司であるオシアンの男前っぷりに惚れ惚れしてしまった僕としては、ミルカとオシアンのお話も読んでみたいです(スティーヴンはかわいそうだけど)。続きが出たら、そっちのほうのお話もあるとうれしいな。
忘れられた花と人形の館―霧の街のミルカ (コバルト文庫 あ 16-22)
青木 祐子
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