「……敷島さん」
迷ったあげく、陽菜は目を開いて敷島を見た。多忙のはずの彼がわざわざ病室まで来たのは、きっとこのことを話すためだろう。そう思ったからだ。
「私って……なんなんですか?」
自分の歌が、感染したものは人を襲うという「天使病」の孵化を促した?嫌われることに臆病になっていた少女・陽菜が、その力を欲する軍によって、平和な日常から殺伐とした世界へと足を踏み入れていくシリーズの第三弾。今回は、軍方面では、本土から探りを入れてくる者が、敷島の副官としてやってきて、学校方面では、覚野がアンゲルゼについて調べ始めて、というところから、お話が広がっていきます。
まさか!と思ったラスト一行。陽菜の抱えてる事情と、敷島の抱える事情がだんだんと見えてきてたときに、こんな言葉を発せられると、ええ!と思ってしまう。ってことは……ってことなのかなあ、といろいろ悶々するものがある。
それにしても、自身が人間とは異なる存在であることを実感させられるところは、きついなあ。食事を変えるだけという、ただそれだけの行為だけど、他人がやったとき恐怖を感じてしまった陽菜からすると、同じ行動を自分がしたら……という思いに駆られるのも当然か。頑なに拒む陽菜の姿は心に痛いけど、すっと入り込んできて、和らげてくれる湊くん、いいですねぇ。
湊さけじゃなく有紗もちょっとずつ変わってきてて、会話をしていると、その場にいてくれるようになってきましたよね。今までのように無視することなく、時に冷たく感じる言葉も、覚悟を決めさせるためだと思うと、なんかいい感じでチームが出来上がってきてるような気がしてきました。まあ、仲間として近くなればなるほど、別れが辛くなるわけですが……。
一方の覚野。実は今回一番頑張ってたと思います。
タブーであるアンゲルゼについて調べ始めるのはいいけど、まさか敷島に話を通すとは思わなかった。それを引き受けちゃう敷島もどうかと思うけどね!突き放したかと思ったら、優しく受け入れる敷島マジックには思わず惚れちゃいそうになりますが、なるほどなるほど、そういう思惑があったのか。
今回それなりに辛くとも、今までほどグッサリくるものがなかった陽菜でしたが、自身の持つ力の影響を思うと、これは想像以上の覚悟が必要となりそうですね。しかも、敵……というか、味方でないものはアンゲルゼだけじゃないみたいだし、そうなると、敷島も覚野という存在を引き入れたくなるか。
覚野もまたひとつ大きな事実に気づいたので、このあたりの話も今後見せてくれるんでしょうね。どうなっていくのかとても楽しみです。
アンゲルゼひびわれた世界と少年の恋 (コバルト文庫 す 5-67)
須賀 しのぶ
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