「おまえだって、おれのこと平気で傷つけるじゃないか」
「……わたしが?あなたを傷つけてる?」
「ああ、そうだよ。ふりだけしろって?そんなのできるわけないだろ、おまえが芝居のつもりでも、こっちは……」
イギリスの上流階級の父と日本人の母を持つお転婆な少女エリカが、両親の死をきっかけに祖母の待つイギリスへ渡り、上流階級が何たるかを学ぶべく、レディズ・カレッジにの寮で生活をするお話の第三弾。今回はヴァレンタインが近づき、ジェラルドが落ち着かない日々をすごす中、エリカが他の女の子からの言付けの手紙を、ジェラルドに渡してしまい……というお話。
ああ、ジェラルド。なんて涙ぐましい努力をしてるんだ。監督生という立場を利用して、用もないのにエリカのクラスを見回ったり、没収したお菓子をさりげなくプレゼントしたり、果てはヴァレンタイン当日に監督生の集会を開いて何かしら接触を持とうとするんですから、ジェラルドの気持ちを知ってる身としては、微笑ましいなんてもんじゃない気持ちになります。
そんな不器用なジェラルドの優しさに、まるで気づかぬエリカを見てると、もうニヤニヤが止まりません!すっげー堪能させていただきました。
そんな二人の間に入ってくるのが、ジェラルドの親戚の女の子レベッカ。おとなしい引っ込み思案な子だけど、母親は上流階級思考というか、身分高き人しか相手にしないみたいなところがあって、身分を持つエリカやお金持ちのジェラルドに、娘を近づかせようとたくらむから、だんだんと話がこじれてくるんですよね。
母親のもうアタックのせいで、レベッカとジェラルドという関係を考えたら、何かもやもやするものが出てきて、ジェラルドとしては面白くなくて、ついエリカに当たって……。
ジェラルドが思わぬ行動に出てしまったことで、エリカも自分の思いに気づいて、今までにない弱さを見せてくれるところが印象的だったなあ。人を好きになるって事は、時に不安を呼び起こすことでもあるんですよね。身分なんてものを今まで意識したことなかったのに、急に大きな壁と感じてしまった恋模様。もどかしくも、応援したくなるものがありましたね。
悩むエリカに対して、校長として身分についての意見を述べながらも、孫への愛情も忘れないおばあさまの言葉や、態度は冷たくても何かと世話を焼いてくれるイザベラのあとおしなど、家庭と学校や寮の中など、いろいろな人の支えがあることが見えてくるところが、とても温かく感じました。こういう雰囲気、ほんと好きだなあ。
いやあ、面白かった。今までは、上流階級の子供たちが集うところで、風穴を開けていくエリカでしたけど、今回は身分違いの恋物語になってて、たまらなくやられました。
今回いい感じで終わってて、ある意味一区切りなのかなと思ったりしましたが、あとがきみると、まだ続くっぽい?せめて二人のゴールを、と思ってるので、ぜひとも続きをお願いしたいですね。
花咲く丘の小さな貴婦人それは青いすみれの季節 (コバルト文庫 た 16-35)
谷 瑞恵
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