サラは、年下に見えなかった。少女だが、ひょっとしたら社交界デビュー間近な時期なのだろうか?それにしても手紙を渡してやったのは俺だというのに……。
「……ふたりっきりでか?ビアード」
「もちろんだ。気になるんだな?シャーリー」
仕立て屋と公爵家の御曹司の身分違いの恋を描いたシリーズの十二冊目の物語は、四編からなる短編集です。
- 誰からも後ろ指を刺されないようにと世話を焼く叔母と姪の確執を描く「ドレッシング・ルームの高い窓」
- 男爵令嬢ファニーと探偵ケネスのじれったい恋の出来事を描く「希望という名の猫」
- シャーロック十四歳。寄宿学校で生活しているとき、気になる女性が……?「窓の向こうは夏の色」
- 「恋のドレスと秘密の鏡」(→感想)のモアティエ公の暗き過去を描いた「幸福な淑女」
クリスとシャーロック分は足りませんが(さらにいうならパメラ分が足りなすぎ!)、それ以外の人たちの物語でも十分魅せてくれます。
いつもどおりのドレスを通じて、当事者たちのお話を描いていくのは、「ドレッシング・ルームの高い窓」ぐらいですね。主となる人が当初思っていた人ではなくて、あれ?と思ったけど、こういう大人の女の人の心が見えるお話もいいですね。
叔母と姪の確執がなくなっていく展開もさることながら、若き日をもう一度じゃないけど、年齢を重ねたからといって、魅力は決して衰えないんだなと思わせてくれる最後の描写がよかったです。手助けをしたクリスに拍手。
個人的に一番好きなお話は、「希望という名の猫」かな。身分違いの恋をしていると、特に自分のほうが低い身分だと、相手のことを信じていても、引け目を感じることってあるんでしょうね。男爵令嬢のファニーが隠し事をしていることを知り、いろいろ迷い、嫉妬するケネスの様子が面白い。まあ、なんかのろけを聞かされてる気がしましたけどね!
ラストのイラストがとても素敵で、うっとり。
ちなみにこのお話では、シャーロックがいろいろやらかしてくれました。クリスの指にはまっていた刺繍の指貫を指輪と勘違いして焦ったところが、すっごいおかしかった。うふ。
シャーロックの学生時代を描いた「窓の向こうは夏の色」は……、なんていうか、こういう生徒が下級生でいたら、こらしめてやりたいと思ってしまいそうな僕がいました。だって、シャーリーってば、小生意気な優等生なんだもん(つまりは今と変わらぬ態度のままなのだ)。
礼拝堂で見かけた女性、上級生の妹、パブの歌い手さんなど、いろいろな女性と出会い、ちょっと期待しちゃったりするシャーロックの心のうちにニヤニヤしてしまう。そりゃ男の子だもんね!
でも、最後には、なんだか女って面倒くさい、みたいな感じになってしまうところが、まったくもってシャーロックなんだから。
最後の「幸福な淑女」は、社交界の闇……とまではいかないけど、身分というものが生んだほろ苦い結婚話ですね。それなりの容姿があるのに、社交界に出ても注目されず、でも友人は常に男の人に囲まれている。嫉妬や焦りを見せながら、ついに掴んだ上流階級の人との結婚という夢が、さらに彼女を孤独にしていく。そんな展開が切なかったです。
卑屈な考え方が、友人をも遠ざけていくあたりがやるせないですね。
さてさて、次は本編に戻るようですが、シリアス話よりも愛ある話になるとか。クリスとシャーロック話はもとより、パメラのほうもいろいろやってくれたら嬉しいですが、どうなるんでしょう。楽しみに待っていたいと思います。
窓の向こうは夏の色 (コバルト文庫 あ 16-20 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー)
青木 祐子
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