「……もし、私がいなくなったら、マリアはどうなるんですか」
知らず、声が震えた。
「その瞬間から、彼女はただのアンゲルゼよ」
「どういう意味です?」
「つまり、人類の敵。私たちが即座に排除すべき存在になるってこと」
自分の歌が、感染したものは人を襲うという「天使病」の孵化を促した?
嫌われることに臆病になっていた少女・陽菜が、その力を欲する軍によって、平和な日常から殺伐とした世界へと足を踏み入れていくお話です。
いやあ、面白かった!
見えてくる真実が、グサグサと心にきて、読んでてホント辛いんだけど、でも、ページをめくる手が止められません。挫折しそうになりながら、心が折れそうになりながら、それでも支えてくれる存在と共に、前を向く姿が見えるからいいんだよなあ。
いや、ホント辛いんですよ。
戦時下とはいえ、今の今まで、戦いとは無縁だった少女が、その力ゆえに軍へと連れて行かれ、しごかれる様が苦しいです。いや、体力的なものだったらまだしも、精神的に苦痛を感じるところは、読んでてホント辛かった。優しいと思った人ですら、必要とあらば脅迫をチラつかせてくるんですから、やるせないものがあります。
そんな陽菜に対して、容赦なく攻め立てる敷島には怒りを覚えることもあるんだけど、でも時折、保護者のような視線を向けてくれるんだよなあ。いったい何を考えてるんだろう。何を知ってるんだろう。気になるばかり。
新たに出会った仲間の有紗が、また陽菜に冷たく接してくるんですが、同時に感じる彼女の覚悟には、ゾクっとくるものがあるんだなあ。今の今まで中学生だったから当然ではあるんだけど、軍の厳しさを知り、戦いの怖さを知り、何度となく腹をくくって、覚悟を決めていくにもかかわらず、現実はさらに過酷なんだから……、そりゃ自棄にもなるよなあ。突き抜けた湊両親がいなかったらどうなったか、想像するだに恐ろしいものがあります。
でも、そんな状態でも、実験として使われるアンゲルゼに対して、陽菜がみせる優しさが温かいです。苦しみを知るからこその優しさなのかもしれませんが、歌という武器があるならば、それを元に苦痛を和らげよう、思いを伝えようとする姿に、じわりと浮かぶものがありました。
特にマリアに対して衝撃を覚えたときのフォローの歌と、つないだ手のぬくもりは、忘れられません。
天使病のキャリアについての処遇には、これまた嫌なものがあるんですが、陽菜と母との間にあった確執が無くなったのは、不幸中の幸い……とは言えないか。いや、それでも、親子の親愛は、きっとお互いの支えになると思う。
陽菜のことについて、何かしら気づいてきたらしい覚野の動き共々気になるものがあるけれど、さて、どうなるのかしら。
敷島のつぶやいた「底なし」が、不安を呼び込んでくれて、すっごい気になります。
アンゲルゼ 最後の夏
須賀 しのぶ
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- アンゲルゼ−最後の夏 著:須賀しのぶ from 流転屋 2008-06-05 (木) 01:40
- 血のような彼岸花に囲まれた陽菜が、 そのまま向こう側に行ってしまいそうに見えたのが、たまらなく怖かった。 あのときは、手をつかんで一†††.






