冴えないオーストリア帝国の大公のもとに、美しく聡明なバイエルンの王女、ゾフィーが嫁いできた。いつかオーストリアを、そんな野心を抱えていたゾフィーだったが、帝国の古い体質は、彼女を抑え付けるべく動いてきた。顔で笑いながら、くじけそうになったとき、彼女を救ってくれたのは、義理の甥となるナポレオンの子、フランツだった。彼といると、気持ちが華やかになるのだ。
弟のような存在。周囲にも自分にも、そう言い聞かせてきたが、いつしか一線を越えそうな関係になり……。
19世紀のウィーン。ナポレオンの子フランツと、ハプスブルク家に嫁いできたゾフィー大公妃の恋物語です。
これは面白かった!
野心溢れる聡明なゾフィーが、伝統ばかりを重んじる貴族たちの視線に耐えつつ、野心のために周囲を固めていく……お話かと思ったら、そうでもあり、そうでもなく。まさか野心が、幼いころから抱え込んでいた野心が、ナポレオンの子、フランツと出会ったことで一変していくとは思いませんでした。
相手は子供だからといいながら、親戚の弟として触れ合っていくうちに、いつしか引き返せないところにまでいってしまったところは、もうドキドキが止まらなくて。
野心と恋と。
周囲の人にうすうす気づかれてるところがありながら、それでも決してフランツとそういう関係にはならず、彼を支えるために、自らの野心を繰り広げていく彼女の姿は、本当に愛を感じました。はじめは、ゾフィーがフランツに惹かれた理由がわからなかったんだけど、なるほど、これが恋かと思った次第。
これほど愛し合っているのに、にもかかわらず、添え遂げられない二人の姿が、心に痛かったです。
己の心を殺して、愛する人を突き放したときのゾフィーの涙や、憎んでほしいと告げたフランツの思いや、二人の間に見える葛藤が、これでもかと心にきましたが、個人的に一番きたのは、倒れたフランツを看病していたゾフィーに、フランツのかつての恋人、ナンディーヌが、問うたときのシーンですね。
「フランツがいなくなっても、あなたはまたいつか幸せになれますか?」
何も答えなかったゾフィーに、その覚悟が伺えて、涙が出てきた。
いやあ、面白かった!
最後に、ちょっと驚くような恋がもうひとつ見えましたが、この激しさにじわりと浮かぶものがあるのは、ゾフィーたちのことを思い出してしまうからなんだろうなあ。
まあ、二人のやり取りだけでなく、夫となった人との間に生まれていくもうひとつの愛の形や、政治家としての視線など、盛りだくさん名内容が、すばらしく面白かったです。
欲を言うなら、2、3冊分ぐらいの分量で読みたかったなあ。もっといろいろな面が見えただろうにと思うと、ちょっともったいなく思わなくもないけど、面白かったからいいか。
帝冠の恋
須賀 しのぶ
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