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[須賀しのぶ] アンゲルゼ 孵らぬ者たちの箱庭

日本全国の中等学校で、最低でも週に一度は軍事教練を行うことが義務付けられたのは、昭和の時代だという。気が弱いがゆえにクラス委員を押し付けられた天海陽菜は、クラスメイトからの嫌味と、指導する配属教官の間に挟まれる日々に、疲れ果てていた。
そんな時、彼女はいつも森の奥にある湖で、歌に反応して現れる「何か」と会うことで安らぎを得ていたが、ある日、その場面を通りかかった少年に見つかってしまい……

感染したものは人を襲うという謎の病「天使病」によって、戦時下となった現代を舞台に、嫌われることに臆病になっていた少女・陽菜が、唯一の安らぎの場所で出会った少年に惹かれていく……、という始まりで、気の弱い少女が感じる不安や、他人の悪意などを実感するところが、実に心に痛い。

特に、一人の少年に惹かれていくことで、内気な女の子がちょっとずつ前を向くようになったところに、温かいものを感じたと思ったら、まさかの急降下があったり、悔やんで苦しんで、ようやく乗り切る気持ちを抱えた直後に、現実が見えてくるんですから。ようやく築けたかもしれないという信頼が、ガラガラと崩れる音が聞こえるよう。ああ、痛い。心がほんと苦しくなる。

戦時下の雰囲気とか恋愛模様とかでも十分面白かったけど、最後の方にきて、天使病が間近に見えてきてからが、また一段と引き込まれるものがありました。まさか、そういう形で天使病が発病するとは!
いや、予想していたところもあったんだけど、さらに上をいかれてたので、ああ、なるほど、あの陽菜が、ひとり立ち向かおうとするわけだ。彼女の求める道は、険しいと思うけど、いつまで耐えられるか心配ですね。

彼女の心を和らげることができるのは、明るい湊か、それとも冷たく見える幼馴染の覚野か。三人の関係は、今後も大いに気になりますね。

アンゲルゼ―孵らぬ者たちの箱庭  - 須賀 しのぶ

アンゲルゼ―孵らぬ者たちの箱庭
須賀 しのぶ

集英社(文庫)
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