様々な人たちの助けを経て、ネフィシカの軟禁から脱出したカリエは、オルの怒りとエティカヤ兵の行軍という不吉な夢を見た。その夢のとおり、バルアンはルトヴィアに向かって兵を進め、密約を交わしていたユリ・スカナでは、どう動くかを検討していた。
そして、エティカヤ軍の侵攻に混乱しはじめたルトヴィアでは、皇帝ドミトリアスと皇后グラーシカが、最後の決断をして……
いやあ、すごかったですね。ユリ・スカナ編の終わりは、全27冊に及ぶ流血女神伝の終わりでもありました。残り三分の一になっても、先が読めないし、本当に終わるのかと不安になりましたが、最後の怒涛の展開には、息つく暇もないほど引き込まれて、最後の行を読み終わったとき、涙が止まりませんでした。まさに感慨無量です。
この物語に手を出したのは、22冊目(喪の女王 3)が出てからなので、かなり遅いほうだと思うんですが、あの時、手を伸ばして良かったと心から思います。この物語を読めたことに大いに感謝。
えっと、一応、未読でこれから読む予定がある方は、以下スルーでお願いします。
今まで、激動の中心には、必ずカリエの姿がありましたが、この巻に限って言うなれば、誰が主役とかなかったですね。とてつもない歴史のうねりに、神々ですら止められないものを感じました。その勢いに飲み込まれながら、それでも、立ち続けた人の眩しさといったらないですね。
バルアンの苛烈な思いに、揺れ動くことになったネフィシカとドーン。この二人の王の民を思う真摯さに、胸が痛くなるばかり。そんな中、姑息なまでに保身を図る者たちの姿は醜く映りましたが、それも人の思いが生み出したものなんですよね。必死に生きようとあがく姿もまた愛おしいと思わせてくれたオレンディアの心情と行動が泣けてくる。
意外だったのは、ザカリアの言葉だなあ。今までは、恐ろしいまでに残酷というイメージしかなかったんですが、それはごく一部のことで、別の一面もあるとは。神と人の差なんてそんな無いんだなと思う次第。
今の状況が、タイアスの高潔さから導かれたと知ったときには、何をやってるんだと思わずにいられませんでしたが、そういえば、ドーンも同じような失敗をしたなあと思ったりもして、何ともいえない気持ちになりました。
多くの人が倒れていく中で、最も印象に残ったのは、誰がなんと言おうと、クラーシカしかありえません。弱さから一度は退きながら、舞い戻ってきた彼女の姿には、誰よりも誇り高く、誰よりも神々しいものを感じました。部下との間にも深い絆を見せてくれて、もはや散ることは分かっていながらも、それでも……と願わずにいられなかったです。
誰よりも王族でありつづけたが故に、彼女を倒れることになったとき、ルトヴィアは終わったのだと、そう思いました。
一方的に終わらせることが可能であったにもかかわらず、彼女の思いを汲み、武人として最後を迎えさせた敵将グナウスキーの高潔さに、感謝の気持ちでいっぱい。
ルトヴィアの崩壊については、既に決定済みのことでしたが、それでも、まさかあの人が動いてくるとは思いませんでした。なんと愚かなと思いましたが、ここはむしろバルアンの巧妙さを褒めるべきかもしれない。
あの場に留まることができなかったドーンの悔しさには、胸を引き裂かれるぐらいの思いが伝わってきましたが、それでも決して諦めなかった姿に、二度目の演説に、涙。
個人的には、もうちょっとバルアンの話もほしかったかなーと思わなくもないですが、あの悲惨な終わり方を考えると、さらりと流したほうがいいか。克明に描かれたら、心がやられちゃうかもしれない。
側に大切な人がいたかどうかが、幸せな最後を迎えることができたかどうかの分かれ道なのかなと思いました。
いやあ、面白かった。女神に振り回されながらも、決して闇に染まることなく、最後まで前を向き続けたカリエが素敵でした。側にいたら、きっとドーンの言葉を言いたくなるだろうなあ。
だから私は、彼女を語るときにはあえて「カリエ」と呼びかけたいと思う。
いかなる困難にあっても、常に闇の中から生じて我らを照らし、その偉大なる凡庸さで道を示してくれた原初の光(カーリエ)と。
流血女神伝については、これで完結とのことですが、気になっていた子供世代については、何らかの形で見せてくれるとのことなので、今から楽しみに待っていたいと思います。
流血女神伝喪の女王(8)
須賀 しのぶ
関連エントリー
[須賀しのぶ]
[コバルト文庫]
[ライトノベル]
Home > ライトノベル > [須賀しのぶ] 喪の女王8 流血女神伝
Trackback:0
- TrackBack URL for this entry
- http://www.booklines.net/mt/mt-tb-t.cgi/2034
- Listed below are links to weblogs that reference
- [須賀しのぶ] 喪の女王8 流血女神伝 from booklines.net
Comment:3
- さおり 2007-11-04 (日) 13:54
-
お久しぶりです。私も喪の女王8は途中から涙が止まらず、なかなか読み終わすことができませんでした。
私は、オレンディアとグラーシカの最期が心に残りました。上手くいえませんが、オレンディアが亡くなる直前に必死に生きようとする人々の姿は何よりも美しく愛おしいとタイアスに語りかけたところと、誰のためでもなくギアスが命をかけて守ろうとした人々や国を守りたいと思った彼女の言葉に心打たれました。
グラーシカは彼女と親衛隊があそこで降伏せずルトヴィアの誇りを見せて死んだことが結果的にイーダルを動かしルトヴィアを救うことにつながった事を思えば、グラーシカは皇后としてとても幸せな最期だったと思いますが、例えその後は一生幽閉されることになったとしてもやっぱり生きてその後のルトヴィアを見届けてほしかったです。
あと、ロイに普通このタイミングで革命を起こすかと怒りを感じました。ロイの行動を見ると結局、貴族への憎しみだけでルトヴィアや民衆への思いがあまり感じられませんでした。 - deltazulu 2007-11-04 (日) 20:43
-
> 私は、オレンディアとグラーシカの最期が心に残りました。
このふたりは、ほんと心に残りましたね。オレンディアの祈りを思うと、ギアスがあそこで……というのは幸せだったのかもしれないと思いました。
グラーシカは、ほんとつらかったです。王族としての顔は立派でしたが、それでも……と思わざるを得ませんでした。タウラの中世もまた泣かされてるばかり ;;あの場面のロイは、ほんと嫌でしたね。思想にとらわれて、長期の計画を立てられなかったことが、彼の敗因だと思いますが、それに巻き込まれた人のことを思うと、怒りを覚えます。ドーンも早いところ、手を切っていれば……と、たらればを思わず言いたくなりますが、それが時代というものなんでしょうね。
時代の流れを感じさせることといい、格登場人物にたいして、これほどの感情を抱かせてくれることといい、流血女神伝のすごさを改めて感じました。
- さおり 2007-11-08 (木) 14:55
-
私もタウラや親衛隊のグラーシカやルトヴィアに対する忠誠心の高さが印象に残りました。彼らにとってグラーシカは運命を共にするに足る人間だったんだなと思います。
あと、ページが増えてもよかったのでイーダルが革命政府を解体して総督府を開くまでやバルアンが兵を引いた理由なども書いてほしかったです。
私も子供世代の話を読みたいです。






